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閑話 ある日のユングの苦悩14

 あれから毎日スナフスキンの巫女のところに来るようになった。けどあの家に入る訳じゃない。城のこっち側はあまり人がいない。それを利用して、普通に城の中でよさげな所をつれまわしてる。まあ本音を言うと、僕があの家に行きたくないって事だ。

 別にアラガタのおかげで、あの家に行っても僕は問題ない。けど腹の中と言われて、安心していけるかというと、そうじゃない。それなのに今もこのスナフスキンの巫女さんのお世話をしてるこの人付きのメイドさんには尊敬の念が絶えない。


 城を当てもなく歩く。白い床に解放された側面には壁じゃなく、柱しかなくその開放感が凄い感じになってる。ある意味で危ない感じなんだけど、飛び出すことはない。なぜなら、透明度の高いガラスのような物でちゃんと外とは隔絶されてるからだ。


 気持ちの良い日差しを感じながら、横にならんで歩く。不思議な歩き方をするスナフスキンの巫女。普通、人種が歩くとなると、上下に体が揺れるだろう。でもスナフスキンの巫女は違う。見上げる程の身長なのに、その歩き方はとても優雅だ。何やら流れるかのように動いてる。本当に脚を動かしてるのか……と思う位だ。


 でもちゃんと彼女は横にいる。僕は確かに歩いてる。それば間違いない――というか、間違いようがない。それでも彼女……スナフスキンの巫女はついてくる。足音もなく。肩も揺れない。でもそのゆったりとしたドレスは後ろに流れてる。


「それで、どうなった?」

「ええ、なんと彼はいったのです『犯人はここにいる』と」

「なるほど……」


 最初はそれぞれの星の事を色々と話してた。でもそれだと、スナフスキンの巫女が辛そうにするからやめた。ない故郷を思いだす。その辛さはわかるから……いや、故郷事態は僕はあるけど、住んでた場所とかは既にない。

 そんな規模じゃないんだろうけど……でも故郷を思う気持ちに上下なんてきっとない。だから辛いことに変わりないだろうし、なんでもないような娯楽小説の事とか、町中の出来事なんか……そんな他愛もない話をしてる。


 最初は相づちもなかった。けど最近はどうやらテレビも見てるようだ。ちゃんと反応してくれる。それでもスナフスキンの巫女が僕の事をどう思ってるのかはわからない。今は穏やかに見えるが、僕の中にはアラガタがいる。


 アラガタは仇だ。彼女はアラガタを許すことはきっとない。そしてそれを宿す僕……複雑だと思う。でも、直接僕を殺そうとはどうやらしないらしい。最初にヘタに手を出して、返り討ちにあったのも効いてるんだと思う。

 でも今見る彼女は穏やかだ。それが演技だとしても……抑える彼女はきっと聡明で……理知的なんだと思う。一時的に感情的になったけど……僕がアラガタを見せないようにすれば、彼女、スナフスキンの巫女とまともな関係が築けるかもしれない。

 そんな思いがあるから、これからもこうやって彼女の所に来ようと思う。それが僕みたいな子供に出来る事なら、なおさらだ。

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