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閑話 ある日のユングの苦悩3

「すまないな、病み上がりなのに」


 そういうのはお父様であるカタヤ様だ。今は別にお父様も王としてそこに居るわけじゃなく、自分たちの生活区域で寛いでる所だ。お父様は普段はもっと楽にしてくれると嬉しい――って行ってくれるけど、なんとなくこのまま来てる。

 別に家族じゃないとは思ってないし、もう一つの家族だってちゃんと思ってる。最近キララ様の事をお母様と呼べる様になったしね。そして妹も出来た。懸念だった二人の間に子供が出来た事で自分と言う存在の居場所がさらに希薄になるんじゃないかって事も無かった。


 実は二人の事を慕ってる人の中には僕を疎ましく思ってる人が居ることも知ってる。いや、疎ましいというか、邪魔だと思ってると言った方が表現としては正しいかもしれない。お父様とお母様……二人は人種の英雄と聖女だ。その輝かしさに、人種で憧れてる人は居ないんじゃないだろうか? 

 そもそも二人とも元は貴族ですらない。ただの平民(お母様は更に下の立場だったんだけど)から玉座にまで昇った二人への憧れはとても強い。


 だからこそ、僕と言う元の王族の血を引く者が養子と成ってる事を汚れてる……とか言う人もいる。それに今の豊かさはお父様とお母様が王になってからだ。厳密にはファイラル領はラーゼ様がその地を治めた時から、始まってたらしいが、それはあくまでファイラルだけだった。でも今や、人種の領域は全体で豊かになってる。


 ファイラルから遠い領の人達ほど、それはお父様やお母様のおかげだと思ってる。そして人種はファイラル以外が多い。まあそれはそうだ。ファイラル領はあくまでその当時の人種の領の一つでしかなかったんだからね。そして昔のファイラル領は尤も貧しく、人種が少なかった土地だ。今やもう、その面影はない。僕自身、資料でよんでも信じられないくらいだ。かつてのファイラル領の殆どは今や、クリスタルウッドの森で埋まってるからね。


 そんな豊かさは二人の英雄のおかげ……それが国民の殆どの認識な分けで、後に元の王族である自分が後継者なんて事になると国民は不安になる。そんな事を今から心配してる人達と案外多い。だから僕と言う存在は形見が狭い。

 ちゃんと実績を残せば……この国に貢献してる所を見せればっておもって、無理言って子供なのに軍に入れて貰ったりしたが、それでも「点数稼ぎ」とか「わがままを出し始めた」とか言われてたの知ってる。まあその声も、この間の星の騒動でかなりやんだけど。


 僕も多大な貢献をしたことは、世間的には公表されてないが、上の方の人達はしってる。軍の人達もそうだ。だから前よりも形見は狭くなくなった。依然として僕の事を邪魔者と考えてる人達はいると思うけど、ラキアが女の子だったから、それほど積極的に動く事はないだろう。


 それこそ生まれたのが弟なら、僕を殺してでも後顧の憂いを絶とうとしてくる人もいたかもしれない。軍に入ったのは周囲に僕は後継者じゃないって思わせるアピールでもあったんだけど、大きすぎる功績もそうだけど、結構前から逆に受け止められていたらしい。軍で実績を上げて、玉座を狙ってるみたいなね。僕的には軍籍で政治とかから遠ざかるアピールだったんだけど……いや、疑う人はどんなアピールでも都合の良いように受け取るんだろう。


「いえ、それで用とは?」

「なんだ? 息子を呼びつけるのに用がないとダメなのかな?」

「そうじゃないですけど……用があるって言ってませんでしたっけ?」

「まあ、そうなんだが……まあいい。一回り大きくなったみたいだしな。キララも母としての自覚を持ってユングを受け入れたようだし、良かったよ」


 そう言って深く頷くお父様。確かにお父様は色々と僕とお母様の間にたって苦心してくれてたからね。ようやく今の様になって心労が一つ無くなったんだろう。そんな事を思ってる、コホンと一息いれて真剣な目を向けてくる。


「まあ、なんだ。ちょっとした頼みだ」

「頼みですか? 僕に?」


 お父様は王だけあって、色々と駒は多い。僕を使う必要はあまりないような? 


「ああ、ちょっとした客人が居るんだが、ユングが一番適任かと思ってね」

「その方をもてなせば良いのですか? どういう方でしょう?」


 不思議なお願いだ。それなら、それこそ僕なんかじゃなくもっと別の適任がいそうだが? でもきっと理由があるんだろう。出ないと僕を指名なんてしない。


「その方はある高貴な出の方だ。ちなみに人種じゃない。そしてお前を指名したのも彼女だ。まあ大丈夫だろう。もてなすなんて事を出来ないラーゼとはお前は違う。そうだろ?」

「はあ……」


 確かにラーゼ様はもてなす側ではなく、もてなされる側だろう。ならエデンにいたのだろうか? でも僕を指名? よくわからない。とりあえず、お父様にお願いされたし、頑張ってみよう。

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