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閑話 ある日のコランの日常 11

 私達は列車に乗っている。それなりの人数が乗ってる筈なのに……とても静かです。皆さん、声を発しない。聞こえるのは列車が動く駆動音だけです。何人かは珍しそうに外を見てます。まあ人種の国とは違いますからね。それに単純に旅行って昔は出来る人は限られてました。


 だからこうやって知らない景色を見るってのもそうそうある事じゃないんですよね。そもそもがこんな乗り物に私達の様な庶民が乗れる様になってるというのがもっともっと小さな頃には信じられない事です。


(ん? 庶民?)


 なんか勝手に彼女達が庶民とか思ってましてたけど、中にはとても立ち振る舞いが洗練された子も居ます。それはちゃんと教育を受けてきた証みたいなものです。私達も今はマナーの教育も受けてるからわかります。綺麗な姿勢とか立ち振る舞いってとても大変で、それが自然に出来てるって事はちゃんとした教育を受けられた証みたいな物だって。


「えっと、貴女は貴族の方ですか?」

「コラン様、敬語なんて不要です。私は……没落貴族ですから」

「えっと……」


 なんと返してあげればいいのか……今はカメラも回ってないし、ちょっとした交流にあてようかと思ったんだけど、教育よさそうと声を掛けたのに地雷でしたか……この国はここ数年で大きく変わってます。そのあおりを一番受けてるのが貴族と言っても過言ではないです。


 そもそも今王になってるカタヤ様が貴族じゃないし、なんだかこう、庶民でものし上がれるみたいな雰囲気がとても高いです。そういう読み物もいっぱい出てます。そしてその一番人気がカタヤ様をモデルにしたと思われるお話です。

 まあけど、そのことはいいですね。とにかく、話しかけちゃったのはしょうがないです。もっと和やかに行きましょう。彼女は所作に育ちの良さがにじみ出てます。だからか、他の子達に遠巻きにされてるみたいですし、ここはアイドルの先輩である私がそんな壁を取り払わないと……ですよね。


「そうだ! どうしてアイドルになろうとおもったんですか?」

「そうですね。今家はお金がなくて、貴族だった物ですから、両親は働き方をしりません。プライドも高い方なので、平民と同じ場所で働けるか――といってひもじくなっていくばかりです。屋敷を売り払えばまだお金になるのですが、まだ両親は貴族という物にこだわってまして……家には弟もいるのですが、このままでは二人して餓死してしまうと思って私が一念発起してアイドルを目指すことにしました」

「へ……へぇ~、大変だったんだね」


 重い……重いよ!! まだ十五にもなってない小娘には重すぎる話です。まあわかりますけどね。その気持ち、わかります。ひもじい思いは私もしてました。両親はまともでしたけど、家は常に貧乏でしたし。そもそもが昔はまとにも食べられる方が珍しかったんじゃないでしょうか? 

 今やちょっとお金で食べられるものが売られるようになりましたけど、それこそ昔は同じ値段で残飯を投げられるくらいでしたし。


「このくらいは大変のうちにも入りません。皆さん、もっと大変な思いをしていたみたいですし」


 そういって彼女は長いまつげをふせる。彼女が孤高してるのは、ただ単に身分の壁とかではないのかもしれません。彼女は責任とか感じてるんでしょうか? 貴族なのに何も出来なかった事に……そして今の現状をありのまま受け入れてる。


ここで私が何をいえるのか……むむむ……そうだ!


「えっとですね。アイドルは皆を愛するんです。そうしたら、皆いっぱい愛を返してくれるんです。だから、その心に愛があればきっと大丈夫です!」


 自分でも何を言ってるのかわからない。けど、彼女はその瞳の片側から涙を一筋流してた。そして崩れ落ちるようにして床に膝をついてしまいました。


「だ、大丈夫ですか!?」

「コラン様は……本当に天使の様に輝いておられますね」

「そんなことは……」

「いいえ、私には貴女様が輝いて見えます」


 なにかとても感動された。

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