閑話 魔王ミリアの日常5
「きゃっきゃっ」
「可愛い!! キララ、私にも私にも!!」
「潰さないでよ……」
「潰さないよ!」
失敬な、流石に私だってそんな事はしないよ。この前の事は不可抗力だよ。あまりにもこの子が可愛すぎてちょっと力が暴走しただけだから。二度目ともなると、そんなへまはしない。なにせ私は魔王だからね。魔王に抱かれてる赤ちゃんなんて貴重だよ? きっと将来大物になるね。縁起が悪いって言う奴も居るが、そういう奴は粛正である。
「おおー、この前よりもちょっと重くなった気がする」
実際私ならでかい岩とか巨木だって地面から素手で引きちぎる事が出来るから、赤ちゃんの体重なんて有ってないような物だけど、別に鈍感な訳じゃないからね。そこら辺の感覚だって人種よりも実際優れてる。私はキララから赤ちゃんを奪い……じゃなく、受け取って優しく両腕で包み込む。
一瞬、お母さんから離れるのがイヤでその服を掴んでたけど、その抵抗は無意味だった。別に無理矢理引き剥がした訳ではない。きっとこの子も私が安心できる存在だとわかってるから、キララから離れたのだ。魔王だけど、優しいよ!
「あうあう」
「うんうん、ミリアお姉ちゃんですよ」
私は赤ちゃんを優しく揺らす。それに対して小さな指をくわえて笑ってる赤ちゃんに癒やされる。
「やっぱり疲れたときは癒やしが必要だね」
「育てるって大変なのよ。ただ好きな時に来て、かまってくだけのキララにはわからないでしょうけど」
「ふーん」
聞き流しながら私はふにふにのほっぺをつつく。それに対して嬉しそうにする赤ちゃんをがたまらない。まあ確かに実際は赤ちゃんって大変何たろうなって思う。だってどう考えても弱っちいし。世界で最弱の存在と言っても過言じゃない。元々が弱い人種からこんな弱い存在が生まれて、庇護されて数十年も過ごさないといけないってこの世界だとかなりのハードモードだなって今更ながらに思う。
本当に、よく人種がこの世界から居なくなってないのが不思議で成らない。繁殖力が強いし、適応力も高いといっても、他の種とかよりも確実に成長遅いし、トップ性能も早々に頭打ち……どこかの種がその気になれば、一気に絶滅させられてもおかしくはないと思う。
それが無かったのは、奇跡なのか、それとももっと他の理由があるのか……
「そうだ! 今度この子の為に沢山遊べる物を持ってくるよ!」
「いらない」
「なんで!?」
せっかく良い案だと思ったのに! まあ確かに二人の人種の国の王様と王女様だし、この子だって王子様である。そういうのに不足してる訳ないとは思うけどさ……
「そういうのはラーゼの奴が大量に送ってきてるから」
「またあのビッチか!」
いつもいつも私の邪魔をする存在である。私の声が突然響いたからか、赤ちゃんが泣き出す。もうあいつのせいで散々だ。こうなったら襲撃でも駆けよう。そうしよう……と思いながら、私は赤ちゃんをあやした。




