閑話 魔王ミリアの日常4
「な、何事ですか!!」
私がむやみに強力な魔力を放出したせいで一時ちょっと城がパニックになった。急いで部屋に突撃してきた兵士とか、なかなかに優秀じゃないか。まあ私を睨むのは止めてほしい。だって私と兄様の時間をむやみに邪魔されると、ついつい……そうついつい殺したくなっちゃうじゃん。
なんかやけに警戒されてない? まあ私はここの守りなんてポンポンと飛び越えて最重要な人物である兄様に会いに来てるからね。護衛に取っては面白くないのはわかる。わかるけど、私と兄様の間を邪魔しようとするなら容赦なんてしないよ?
私はニコッと笑って威圧してあげる。
「やめろミリア。大丈夫、別になんでもないんだよ」
「そう……ですか?」
彼は不思議な剣をもっていた。何やら魔力がかなり込められてそうな武器。それに服もなんか変わってる。前はそれこそガシャガシャとした鎧を城の警備の奴らは着てたと思う。けど、今はそんな鎧は脱いで布製の様な服をきてる。
でもそれにも肩や胸、重要な部分には魔光石が使われてる。ぱっと見はただのアクセントの宝石にしか見えないが、私にはわかる。随分と魔力を通しやすい服を着てるって。確かにこれなら、あんな重くて役にも立たない全身アーマーを着てる必要なんてないだろう。
そもそも警備の面でも問題あったし。顔まで覆ってる全身アーマーでは変装が得意な種とか楽に潜り込める。こういう風に為たのは良いんじゃない? まあ私にはほぼ無意味だが。
「魔王様も無闇な力の解放にはお気をつけください」
まさか私に意見をいうとは……この人、なかなかに肝が据わってる。流石は王の護衛に選ばれるだけの人なんだろう。まあ本当なら私が護衛したい位なんだけどね。それの方が絶対的に安全だし。けど、それは出来ない。何故なら私が魔王という立場だからだ。
私は兄様の妹だけど、立場的には魔族達の頂点で、同盟の盟友みたいなものだ。そんな私に護衛をさせるなんてのは同盟相手を良いように使ってる……みたいな目で見られる事になる。全くくだらないと思う。だって私が為たいんだよ? 魔王だから傍若無人に振る舞っても良いんじゃないかと思うけど、再び兄様と離ればなれとかになるのはイヤだからね。こうやって会えるだけでもありがたいのだ。
まあだから今は……今は我慢してあげる。
「わかってるわ。ちょっと感情が高ぶっただけなの」
「そうですか。失礼しました!」
そう言って下がっていく護衛。仕事はきちんと為てくれそうだけど、兄様を守るとなるとやっぱり人種では物足りないんだよね。後でちょっと誘ってみよう。もしかしたら道を踏み外してくれるかもしれない。
そんな事を思ってると、赤子を抱いたキララがやってきた。
「騒がしいと思ったら……今日も来たの?」
「私は妹ですから。わあー! ミリアお姉ちゃんですよー」
私はキララが抱きかかえてる赤ちゃんに向かって笑顔を振りまく。うむ、将来はきっと兄様似の男の子になってくれる筈だ。思わず頬が緩んでしまう。




