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Ω200

「家族……」


 カタヤ様の言葉を受けてユングがそうつぶやいた。ユングは養子だ。そしてキララ様はご懐妊……もうすぐ子供が生まれる。そうなったとき、ユングは自分が必要ではなくなると……そう思ってた節がある。養子なんて私は経験したことないから、わからない。


 でもきっと普通に兄弟や姉妹が出来るのとは違うんだろう。自分の場合は単純に喜んだが……ユングの家族は地位も権力も、そして責任もある人たちだ。そこでは養子か、実子かはかなり違うだろう。権力者の骨肉の争いなんてのは古今東西、よく聞く話。

 養子の長男にその下の実子とか……争いの種にしかならないのは目に見えてる。まあユングにはそんな気はないだろうが……周りは……ね。


 ユングがあのとき、犠牲になることを選んだのも、多分キララ様のお腹にお子様が居たことも原因ではないだろうか? あいつはあの歳で、軍に入ってた。それは異常な事だ。軍には正式には十五くらいから入れない。学校でもそれを過ぎてから軍での雑用とかやらされる様になる。


 でもユングは十になったくらいだ。今の姿は成長してるが、本当はそのくらいだろう。それなのに既に正式な軍人である。これだけで権力を使ったんだなってわかる。でも、ユングなら軍なんかにいる必要はない。確かに親であるカタヤ様は軍人だが、それは元から所属してて、その功績で王にまでなったから、軍人という肩書きを下ろしてないだけ。


 それに人種にとっては彼は英雄だ。簡単にその肩書きを下ろして王にだけなるなんてできない。なにせこんな情勢だし。英雄だから王になったのに、王になったら英雄を止めますではダメだろう。親は英雄で王、だけど養子……それを使って軍に入る……なんと扱いにくい立場だろうか。


 でもそれも、きっとユングには考えがあったんだろう。こいつ十位のクソガキとは思えない程に聡明だし、なんか達観してた。カタヤ様とキララ様の間に正式な子が生まれる。そうなると自分は邪魔でしかないと思ったんだろう。


 だから自分は権力には興味ないってアピールの為にも軍に入ったんじゃないか? あいつはいつもどこか遠慮してた。それはきっとカタヤ様やキララ様にも同様だったのかもしれない。


 なのにそんな風にしてた筈のカタヤ様自身が『家族』だと言ってくれた。それにユングは反応してる。


「ああ、あの日お前を引き取った日から、ずっと俺たちは家族だろう!! だから絶対に諦めるな!! 俺が! 父さんが助けてやる!!」


 カタヤ様はそう言ってユングから離れようとしない。一度防がれたのなら、態勢を立て直す為にも離れた方がいい。けど、それをしない。多分、あそこまでもう一度近寄れるかわからないからだろう。こうなったらカタヤ様をサポートを全力でするために私も動くしかない。


 私は鞭を分割させてユングの外郭の機械を押さえる。でもこれ……無理……数秒が限界だ。その時、カンガタが外郭の顎を打ち抜いた。アッパーカットである。大きく後方に反る体。わずかだけ力が緩んだ。


「カタヤ様!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 カタヤ様は剣を引いてユングの手から剣をとりかえした。


「ユング大人しくしてろ!!」

「ダメなんだ、僕は――僕の意思じゃどうにも出来ない!!」


 その瞬間、ファーストの腕が剣ごと吹き飛んだ。そして私たちもそれぞれふきとばされる。どうやらやっぱり言葉だけでどうにか出来るほど……甘くはないみたい。

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