Ω190
「引っ込んだアラガタの事が気になる?」
私のそんな言葉に併走するカンガタが頷く。そして口を開いた。
「奴は直情的奴で戦闘バカだが、決してただのバカではない。バカには世界の頂点を取ることなどできない」
「まあ……それには同意してあげても良いけど……」
確かにカンガタの言うとおりだとは思う。強いだけにバカに世界はとれないだろう。なら、星に奴がもどった意味は必ずあると見た方が良い。けど……既にあの星は限界だ。最後の蝋燭の火を燃やしてるじょうたい。多分世界樹と一体化してた別の星の巫女は既に使い切ってるだろう。
ならもう後は時間の問題だ。アラガタの星は死にゆく星だ。けどその残された時間で私たちの星を狙ってる。だから最後を見守るなんて選択肢はやっぱりない。アラガタの奴が何かを狙ってる。そんなのはわかってる。そしてその狙いもなんとなくだけど予想はつく。
私たちが陣で星を囲いだした時に、既に気付いてた筈だ。だってアラガタはただの戦闘バカではないのだから。なら星を覆う陣の意味を、奴が気付かないはずがない。
「きっとアラガタは私たちの星を破壊する程のエネルギーを取り込む気じゃないの?」
「わかってたか」
「まあ後出来る手なんて、そのくらいでしょ」
既に死に体の星に、最後の一撃を打ち込む。それで全ては終わる筈だ。けど、その一撃を奴らのエネルギーに出来るとしたら、わずかな延命にはなるだろう。けど星に生命が居ないいじょう、どのみちあの星は死の星だ。でも星を壊す程のエネルギーはそれはもう、相当な筈で、アラガタ共が再び暴れる、まさに最後の悪あがきに十分な力を与える事になると思う。
「なら――」
「なら、何よ? まさかこの期に及んで情でも目覚めた? まあ元は一人だった訳だし、わからなくもないけどね。でも……そのときは」
私は銃口をカンガタに向ける。その時はズバンとやっちゃうよって意思表示だ。
「この体には貴様の仲間が居るぞ」
「そうね、残念だよ。けど、あんたはまだ情状酌量の余地あるけど、アラガタは無理なの。あれは危険だからね。ここで確実に殺す」
かつて世界を取った奴なんて、危険じゃん。どこで寝首を掻かれるかわからない。そんな奴はミリアだけで十分だ。これ以上、心労を増やしたくない。私はただ楽ちん楽しい人生を謳歌したいのだ。
「押し通せると……アラガタの全てを貴様が上回れるのか?」
どうやらカンガタは別段アラガタに同情してるわけではないようだ。寧ろ、私たちの攻撃を利用されるのを恐れて提言してきたみたい。それだけ、奴にエネルギーを渡すのは危険だと訴えてるんだろう。それは私も思う。あいつは危険だ。はっきり言ってまだまだそこが見えてないし。
私はカンガタには小娘にしか見えないんだろう。別段間違ってはないからね。ただ超絶美少女の小娘ってだけだ。でも超絶美少女の小娘を見くびらないでほしい。なんたって超絶だよ? 私は笑って言ってあげるよ。
「私を誰だと思ってるのよ。見せてあげるわ。奴が奢ってて、そして私が超絶な所をね」
「そこまでいうのなら、止めはしない」
「わかれば、雑魚をお願いね」
流石に星を破壊する程のエネルギーはポンッと用意は出来ない。ためが必要だ。そのときに鎧共に邪魔される訳にはいかない。だから露払いは皆にお願いする。鎧共は私だけを目指してる。だから私を全力で守ってね。




