Ω184
「う……ん」
目を覚ますと、冷たい地面の感触が伝わってきます。靄がかかったみたいな頭が段々とさえてくると、私は叫んだ。
「ラーゼ様!!」
立ち上がってキョロキョロと周囲を見るけど、そこにラーゼ様の姿はないです。辺りは少しずつ、起き上がってきてる人も居るみたいだけど、まだ皆さんラーゼ様が降りて来た影響を受けてるみたい。きっとこの世界のためにすごいことをしたんだと思う。
「あれ?」
私はようやく自分がマイクを握ってる事に気付いた。けど腰の重さは健在だ。腰のマイクホルダーを見ると、やっぱり私の特別なマイクはちゃんとあった。てかなんか色が変わってるような? 私のこのマイクは元から綺麗なデザインで装飾もされた奴だったけど、シシちゃんとデザイン的には同じでした。
でも……ちょっと変わってる。具体的に言うと、マイクに飾られてるリボンの色が変わってます。私のはピンクになってて、今持ってるのは緑色だ。シシちゃんのも変わってるんでしょうか?
「そうだ、フィリーお姉ちゃん! 起きて!!」
私はまだ目覚めてないフィリーお姉ちゃんを揺さぶります。すると「うーん」という反応が。これならすぐに起きてくれそう。
「コランちゃん?」
「フィリーお姉ちゃん! はい!」
私はそう言って寝ぼけ眼のフィリーお姉ちゃんにマイクを差し出す。私が二個も持つ必要性はない筈です。なら、渡すのは当然だ。
「これは?」
「フィリーお姉ちゃんの分だよ! ラーゼ様が作ってくれたんだ!」
私がそう言うとフィリーお姉ちゃんが目を丸くした。きっと色々と言いたいことあるんだろうね。どこでラーゼ様に会ったとか、なんで自分の前には来てくれなかったのかとか……フィリーお姉ちゃんもラーゼ様大好きだから。
けどフィリーお姉ちゃんは賢いお姉ちゃんだ。そういうとミラお姉ちゃんが賢くないみたいだけど、そういうわけじゃない。ミラお姉ちゃんはミラお姉ちゃんでいっぱい私たちの事考えてくれてる。リーダーだからっていっぱい頑張ってくれてる。
「これをラーゼ様が?」
「うん!」
私の手からフィリーお姉ちゃんがマイクを受け取る。すると何かを感じたのか、フィリーお姉ちゃんがマイクを抱きしめた。そのマイクがフィリーお姉ちゃんの豊満なお胸に埋もれるよ。スゴイ……私もいつかはフィリーお姉ちゃんくらいなるだろうか?
全然想像できないけど、なったらいいなって思う。
「なんだか~元気?」
「うん、私も元気だよ!! ステージに戻ろう!」
私たちは何故か体から力があふれるみたいだった。だからステージに戻ることにした。するとステージに上がる直前に、シシちゃんとミラお姉ちゃんの声がこの会場全体に響いた。
「「皆あああああ! 寝てる場合じゃないよおおおおおおおおおお!!」」
その大きな声に皆さんが刺激されて起き上がっていく。皆混乱してる。何故、自分たちが粋なり眠りに落ちたのかわかってないから当然です。けど、そんな全て諸々、私たちのライブで吹き飛ばせます。
「シシちゃん! ミラお姉ちゃん!」
「来たか。まあ休む理由はなくなったみたいだな。私たちもそうだ」
「しょうが無いから物欲しそうにしてたミラにマイクあげてやったわ」
「べ、別に私は物欲しそうになんて!」
「あらあら~、けどこれで~プリムローズ全員お揃いね」
私たちはそろってそれぞれの手にあるマイクを掲げる。私たちの思いに応える様にマイクがキラリと光った気がした。
私たちは再び歌い出す。届かせよう。この世界の全てに……そして、この世界の外にまで。聞いててくださいねラーゼ様!