Ω166
「つっ! うわあああああああああああああああああああああああああ!!」
ゼロの頭を掴まれた。もう逃げられない。私は至近距離にいるアラガタに向けてゼロの拳を振るう。だってこのままじゃ死ぬ。この近さは私の……ゼロの領域じゃない。アラガタの領域だ。引き離さないと終わり。でもここまで近づかれて、そして頭まで掴まれてしまっては出来ることなんか少ない。
だからこそ、殴る。本当はゼロの銃を放つべきだったのかもしれない。あれは小さい方だからこの距離でも――けどその考えはなかった。反射的に拳を放ってたんだ。
ガンガンガンガン
出来うる限り、拳を打ち付ける。でもそれでもアラガタが手を離すことはなかった。というか……全然、全く、アラガタの手は離れない。完全に出力が足りてない。
「終わりだ」
目の前のアラガタの目が光る。そしてメキッと頭から音がした。こうなったらもう頭がつぶれた一瞬に離れるしかない。多分頭がつぶれた程度ではまだ動ける。確かに視界は狭くなるが……それでもまだ……なんとか。
「終わりだと言ったはずだぞ!!」
ゼロの頭を握ってる、腕とは別の手を握り締めるアラガタ。
「こいつ!!」
逃げる前にゼロの体を打ち抜く気だ。ヤバイヤバイヤバイ。頭もつぶす気だが、それと同時に完全にゼロを破壊する気。蹴っても殴ってもビクともしないアラガタ。
(ん?)
どうしようもないけど、なんか案外溜が長い? 私はそんな事を思った。アラガタの力なら、そこまで気合入れなくたってゼロを打ち砕くことくらい出来るはずだ。それともこの一撃で確実に粉砕する為に力を貯めてるのか……それにしてはなんかちょっとプルプルしてるような?
「出てくるな!!」
何が? そう叫んだアラガタに私は疑問が浮かんだ。あいつが何を言ってるのかわからない。けどそう叫んだ時には拳が向かってきてる。ゼロの胴体に向かってくる拳は、確実にその装甲を抜いてくる。そうなったら、コクピットにいる私も終わりだろう。
もう私にはその瞬間を待つしか出来ない。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「え!?」
ゼロの胴体を撃ち貫く寸前にそれはアラガタの顔に側面から当たってた。それは腕だ。腕がなんか噴射してアラガタの顔面にあたってアラガタを吹き飛ばす。
「生きてるか!!」
「カンガタ……助かった」
どうやらカンガタがもどってきたらしい。神タイミングとはこの事か。あと一瞬でも遅かったら、私は死んでただろう。てか……あんな機能あった? アラガタを吹き飛ばした腕はカンガタへと戻っていき、自動で元の場所へと戻ってる。
なんかシュールだよ。それにカンガタはなんだか傷とかなくなってるみたいな?
「何があった?」
そう声をかけるのはアラガタだ。アラガタもカンガタの変化を目敏く見つけてる。
「お前ならわかるだろう。そうなってるお前ならな!!」
そう言ってカンガタがアラガタへと殴り掛かった。それを向い撃つようにアラガタも動き出す。再びアラガタとカンガタがぶつかり合う。




