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#87

「もう貴方以外は虫の息のようですよ」

「そうか……やはりそういうことか」


 目の前の奴が多分一番の力量者なのはひと目でわかった。だからこそ、私が担当した。奴もこちらの力量がわかったのだろう……だからこそ、周りに目を向けずに私と向き合ってる。その間にも優秀な部下たちがやってくれた。まあそれもラーゼの力が大きいですけど。それでも力はただの力。扱うものが正しく使わなければ、結果はついてこない。

 皆、上手くやったようです。


 だがおかしい。奴は……目の前の逞しい髭を生えした妙齢の男性は動揺もしない。ただ静かに佇むだけ。明らかに他のユニコーン達と違う。他の奴等は血気盛んな若者という感じだったが……いやそもそも幻獣種の年齢などわかりもしませんが……けど、この眼の前の奴は雰囲気が達人の持つそれ。この人からみたら、私もまた若造なのかもしれません。

 

「何がそういう事なんですか? 幾らあなた達が強いと言われてても所詮はこの程度では無いですか」

「そうだな。この程度……この程度に成り下がってしまった。知らぬであろう。我らが魂は次第に薄まっているのだ」


 魂が薄まる? そんな事聞いたことはない。混血が多くなってるとかそういう事ですか? そもそも幻獣種はどうやって種を増やしてるのかさえ謎です。まあ、大体の上位種は数が増えてるのか減ってるのかさえわかってませんが。だが当人が言うのなら……そうなのでしょう。我ら獣人もその本能が薄まってきた……という主張はあります。それと同じようなことなのかもしれません。

 

「神の寵愛が薄れてきたなどと言われておるよ。角も短くなってきておる。そのうち、ただの馬になるかも知れぬ」

「獣人を挟むのでは?」


 いきなり知能さえも捨て去るとは流石に思えませんが。だがそれがあり得ると……目の前のユニコーンが言う。

 

「そうかも知れぬ、だがな既におるのだよ。姿を変えられぬ者が。我らは獣人の上位などではない。違う種から芽吹いた種だ」


 そう言い切るユニコーンの男。それは確信めいてる。確かに獣人を挟まないと成れば、我らとユニコーンは全く違うものの可能性がある。下位から上位へと昇ったのなら、落ちる時もそれを通るのが道筋というもの。既にこの男はそれを確信し、種の衰退を嘆いてる。

 

「だが……我は希望を見つけた」

「希望?」

「ああ、イレギュラーといえる程の力の塊だ」


 ゾクッと背筋に嫌な汗が伝う。やはりあの娘は男を引き寄せますね。しょうがないんですけど……その目を爛々と輝かせて彼は言う。

 

「あの少女こそ我らが種の力を取り戻す鍵になりえる存在。だからこそ今の腑抜けが何人死のうと良いのだよ。身体など入れ物に過ぎぬ。新たな同胞は彼女に産んで貰うのだから!」

「それであなたの言う魂とかは大丈夫なんですか?」


 ラーゼが生むとなると、魂とかどうなるのかよくわからないです。 というか、ユニコーンも普通に交尾するんですか? まあ人形に成れるのならそういうことなのかも知れないですが。

 

「問題はない。我らが欲するのは身体が。それも力を宿した。それに子という表現も厳密には違う。我らは魂を繋ぐために体を変えてるのだ。だがその魂さえも薄まって来ている。我らは驕ってたのだ。自身の魂の強さに。だがすり減ってる。確実に。だが彼女の肉体が作る体ならば、それも防げよう。我らの魂に耐えられる程の体を、あれだけの力があれば作れる」


 つまりはラーゼの子供を大量生産して、それを自分自身にすると……そういう事ですか。そうやって種を繋いで来たんですね。けどその場合どうやって増えるのか……だって魂が増えるんですか? どうやって増えるのか……分裂とかですかね? グルダフ達が私とともに彼を囲みます。だけど、彼は笑う。

 

「まあしかし、この程度と思われたままと言うのは解せぬ。魅せようではないが。そして語り継げ。伝説に数えられる我らが力を!! そして花嫁を迎えよう」


 奴の身体が光り輝く。そしてその姿が真っ白な馬の姿へと変わる。これこそまさに、聞いた事があるユニコーンの姿。どうやら彼は本物のようです。

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