Ω137
目の前のアラガタの手が開く。私を……いや、ゼロを捕えようとしてる。けどゼロの予測もあって私はその手を避ける。その場でくるっと体をひねる。けどまだ終わってない。奴の腕は片側がまだ銃のままだ。でもそこにエネルギーだけを集めてブレードみたいにしてる。
「死ね」
避けた先に併せてアラガタが攻撃を仕掛けてくる。けどこっちだって避けるだけしかできないわけじゃない。鞭は近距離じゃ使いづらい武器だ。けど、使いようだろう。私は右側の腕を振るって鞭を動かす。そしてそれは攻撃が目的じゃない。私はこっちに向かってくるアラガタの腕に鞭を絡ませる。わずかでいい、奴の攻撃の軌道をずらす!!
「その程度の力で我を御せると思うな!!」
ゼロの力でも止まらないアラガタ。そもそもゼロはパワータイプではない。いや、そもそも改良されたアンティカでもアラガタに直接力で対抗すべきではないのだろう。けど今はそんな分析をしてる場合じゃない。腕に巻き付けて軌道をそらすのは失敗だ。けど既に逆の鞭が私の回避行動を促してる。
自身の足に絡みついた鞭がアンティカの体を無理やり持ちあげて回転させる。それによってゼロの顔ギリギリで私は避けることに成功した。さらにこれはチャンスだ。背後を取ってる。いつもなら、ここでもアラガタのドリルを警戒しないといけない。でも、今はカンガタとカタヤ様がそれを引き受けてくれてる。だからまだいける!
私は背中と肩からこの至近距離で赤いマナを吹き出す。それに伴い、ゼロの動きがスムーズになる。気のせいじゃない。なぜなら、このマナはこちらに有利に成るために蒔いてるんだ。けど濃度が濃いのは少しの時間だけだ。ここは密閉空間じゃなく、広大な宇宙だ。
マナをとどめておくことは出来ない。本当なら攻撃はカタヤ様の機体に任せた方がいい。けど、その時間はない。さっきまで力負けしてたが今ならいける。アラガタの腕に巻き付けてた鞭を引いてその体を崩す。そこにもう一本の鞭でアラガタの体を打ち付ける。それは一回で終わる事はない。ここで出来るだけ……いや、つぶすつもりで行く!
奴の腕に巻き付けてた片側の鞭も使って目にも止まらない鞭の殴打を続けて赤いマナが濃いところから出さない様にする。ここで鞭の利点をさらに感じた。
鞭なら、その場にとどまって縦横無尽に動かせるのだ。そしてその場にとどまれれば、ゼロの場合マナを出し続けて濃度を保ち続けることができる。これ以上はあがらなくて、薄くはさせない!!
私はゼロでラッシュをかける。アラガタにはゼロの鞭での傷が無数に刻まれていってる。効いてる! やっぱりあいつも弱ってない訳じゃない。決める! ここで!! 車長さんや、ユングの為に!!
「クーシャネルラ……さん」
その声は、ふいに私の耳に届いた。そしてその声を私は知ってる。今のは……ユングの声だった?




