Ω133
私は宇宙空間に出た。素直にまずは凄いと思った。何せ空とはまた違うんだ。暗く……けど明るい。矛盾してるじゃないかと思うだろうが、矛盾してない。宇宙空間は暗い、けど星は眩しい程に明るいんだ。そして大きい。後ろにある私達の星はとても綺麗で青く輝いていた。あの中に自分が居たんだと……にわかには信じられない気持ちだ。
そしてすぐ横の星は全然綺麗じゃない。今や、世界樹の根に侵食されてしまったその星は同じものとは思えない程だ。よく見ると世界樹の根が蠢いてるのが見える。そしてその傍では戦いが繰り広げられていた。敵はアラガタ。そして私達はカンガタにカタヤ様にベール様に私。
単純に一対四だ。卑怯? そんな言葉は戦場には存在しない。誰もが命がけで戦ってる。命を守るのに卑怯なんて概念はないんだ。それにこの戦いに懸かってるのは、私達だけの命じゃない。私達の星の全ての命がかかってると言っても過言じゃない。
それなら機甲師団全部を連れてきて欲しかった気もするが、多分ゼウス以外は宇宙空間に対応してないんだろう。それか他の船では大気圏って奴を突破出来ないか。第一宇宙速度がどうとか講習を受けた気がしなくもない。
『カタヤ様、ベール様、クリエイト・クーシャネルラ参戦します!!』
通信を通して私はふたりにそう告げる。カンガタには……まあ察するだろう。戦力が増える事を嫌がるとも思えないし、遠目で見た限り、カンガタよりもフラッシュアップされたファーストの方がいい動きしてる。そしてベール様のセカンドは元々が遠距離攻撃型だ。
アラガタには近づかずに、そのバカでかい砲台をどっかから構えてるんだろう。レーダーには一応その位置が映ってる。
「小惑星を利用て足場にしてるようですね」
ゼロがそんな事を教えてくれる。なるぼど、確か宇宙には重力がないから、反動はずっと続くと教えられた。だから常にブースターが必要だ。けど、常にそれを吹き続けてたら直ぐにエネルギーが尽きてしまう。それに超遠距離攻撃なんて、その威力は半端ない。
つまりは反動も半端ない訳で、どんどん後ろに下がっていってしまう訳だ。それをふせぐためにも小惑星なるものを利用してるんだろう。まあ小惑星は飛んでかないの? とも思うが、どっちかの重力に乗っかってるのかも。それでも小惑星も移動してて、アラガタ達は物凄いスピードで戦いを繰り広げてる。そこに正確に射撃するってかなりヤバイ。
私には出来る気がしない。何やらベール様、体をちょっと改造してたから……そのお陰? 私も改造されたら、もっとゼロと繋がる事が出来るだろうか?
「何かよからぬ事を考えてませんか?」
「ゼロはAIなのに本当に私の心がわかるんだね」
「貴方は単純ですからね」
私は肩と背後から赤いマナを放出しながら戦場に向かう。ゼロのこのマナで戦場を満たせば、こちらに有利に、向こうに不利に働くだろう。アラガタにどれだけ効くかは未知数だが、マナは全ての生物の力の源。原理原則的に効かない道理はない。
「それで、何を考えてたのですか?」
「私ももっとゼロに近づいた方がいいのかなって……そしたらもっと上手くアンティカを操れるし」
「人から離れる事を推奨はしません」
「そう?」
案外ゼロはハッキリとそういった。もっと推奨してくれると思ったんだけど……
「なぜなら、技術を補う補佐をするのか私という存在です。そして私達は違うからこそ、思いもがけなぽ何かが起こる――とラーゼ様はおっしゃってました」
「ラーゼ様が……けど、けどねゼロ。私はもしも自分がアンティカになっても後悔なんてしないよ。だってそれが私の夢だったしね」
「…………本当に貴方は変わってる」
そんな会話をしてる内に既に戦場は目の前だ。私は腰から鞭を取り出して、ゼロが予測してくれたアラガタの動きの先に鞭を振るう。
「アラガタ! 私達の星を食らいたいのなら、まずは私達を倒しなさい!!」




