Ω122
私は最後の装置を起動した後、その場に仰向けに倒れてた。なんかもう全然動く気力なんてなくなってしまったんだ。そもそもこれから先の予定なんて知らされてない。だっていきなりカンガタの奴が私を落としたからね。カンガタの奴はちゃんとラーゼ様を守ってるだろうか? 既にやられてるとかないよね? まあ戦闘音は聞こえるからそれは無いだろう。
けど私はどうすれば? 本当にそうおもう。全てが終わったら回収しに来てくれるだろうか? 忘れられてないといいな。目を閉じると、この星で過ごした光景が思いだされる。今、私は違う星にいる。宇宙を超えて違う星に……
「ユング……車長さん。私もそっちに行くことになるかも」
瞼を閉じた中で二人の姿が見えた。迎えに来てくれたのかもしれない。不思議な事に、一度こうやって止まると、もう動きたくないと思ってしまう。実をいうとずっと限界は来てたんだろう。そもそもがマナが違うんだ。ずっと慣らしてたが、マナが違うという根本は生命にとっては重大な事なんだと思う。
ハッキリ言ってこうしてるだけで辛い。故郷の星ではここのマナに侵食されて凶悪化とか姿まで変わる生き物がいたくらいだ。もしかしたら……私もあんな風になってしまうのかもしれない。いや、そうなる前に体が耐えらなそうだけどね。
人種は弱いから、変化まではきっとしない。その前に死ぬんだろう。
「私は英雄だったかな?」
託されたことはやれたはずだ。英雄に恥じない役目は果たせただろうか? 本当はもっと派手に散る予定だったんだけどな。世界は本当にままならないよ。けどラーゼ様を守れたのなら……いきて返せるのなら……それはきっと評価される事だろう。
「貴方にしてはよくやったんじゃないですか」
そんな小生意気なユングの言葉が頭の中で再生される。そういってもらえるのであれば……よかったとおもえる。なんだか揺れが酷くなってきてる様な……けどこの建物は崩れる事はない筈だ。そう思って安心してた。でも次の瞬間、建物の半分が抉られた。
そしてその壁をぶち抜いた腕から出てきたのは絶世の美少女。
「クリエイト! クリエイトどこ!!」
ラーゼ様はその長く綺麗な髪を振り乱しながら私の名前を呼んでる。来てくれた。置いてかれると思ってたけど、ラーゼ様は私をちゃんと心配してくれてたんだ。偉い人にとっては兵士なんて消耗品みたいなものの筈なのに……
「ラーゼ様……」
私の声はひどくか細かった。私でも自分の喉からこんな声が漏れるなんて信じられない程のか細さだ。けどラーゼ様は……
「クリエイト! そんな所に居た! 待ってなさい。今行くからね!」
その優しさに、私はちょっと感動した。
 




