Ω105
カンガタから投げ捨てられた私は落ちていってる。その高さは絶望的でこのままでは自分の役目を全うする前に地面に激突してお陀仏だ。それに頭上からの衝撃がヤバイ。カンガタとアラガタの争いはとても激しくて、ぶつかり合う度に衝撃波が吹き荒れてる。
流石に最強を謳う種のぶつかりだ。しかもその言葉は誇張ではない。奴らは事実、私達の星で遥か昔最強だった種なんだから。本当に天変地異起こしそうな力を持ってるんだ。カンガタに守られてる時は分からなかったが、少し離れるとその恐ろしさがよくわかる。
脆弱な人種なんて、あの戦いに巻き込まれただけで死んでしまうだろう。
「当たらない様にしなさいよね」
私はそう呟いて下をみる。カンガタとかが私にも配慮してくれる事を信じるしかない上の戦いと違って、こっちは私自身の戦いだ。カンガタの奴はいきなり私を放り投げた。それはここから投げても大丈夫と言う確信があったから……
(だよね?)
……もしかしたらあんまり人種という種を理解してないって事はないよね? あり得そうで怖いんだけど……だってカンガタが私達の星に居た時ってめっちゃ昔だ。それこそ昔々言う程で、人種的には御伽噺に近い時代。その時から人種がいたかもわからないが、いたとしてもこんな雑魚な種を奴らが認識してたかわからない。
カンガタとかにとってはこんな高さは屁でもないだろう。けど、人種は高すぎる場所から落ちると死んでしまうんだ。それをちゃんとわかってるよね? 私はカンガタから託された小手を撫でる。これには『力』があるらしい。これでどうにか出来なかったら、私はここでおわりだ。
地面がどんどん近づいてくる。下は瓦礫の山だ。ハッキリ言ってこのままだと足を突く場所さえない。どこに落ちてもズタボロになる未来がみえる。この小手がそれら全部を吹き飛ばして私を助けてくれるのか……
「ええーーーい!!」
私は小手がついた右手を突き出した。所謂政権月だ。その瞬間、手の先からなんかでた。瓦礫は吹き飛び、私もその何かの衝撃でふわっと落ちてきた反対側に浮き上がる。
「おっこれで勢いが落ちた?」
何もなくなった地面に私は無事におりたった。カンガタの事をちょっと見直す。なんか凄い物くれてたようだ。頭上では激しい戦いが繰り広げられてる。どうやら世界樹の根とかもこっちに来ることはなさそう。多分アラガタは私になんか興味ないんだろう。
「今に見てなさい」
私はそう呟いて走り出した。実は上空からこの都市を見て、記憶の中の地図と照らし合わしてたのだ。色々と崩壊が進んでて絶対の自信はないが、カンガタの言う通りなら、あの装置がある建物は無事な筈だ。ならきっと近くに行けばわかるだろう。
私は装置を起動する為にたった一人、走りだす。




