表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/2415

#80

 阿鼻叫喚の声が響いてる。都市は炎に包まれて、獣達は世界の理不尽さに泣く。戦いも戦争もここまで来るとは思ってなかった? そんな生易しい世界ではないとこの世界の人達の方がわかってる筈だと思ってた。それこそ、私が前に居た世界よりもずっと死が近い。それに獣人は戦いに喜びを感じる種とも聞いてたのに……案外以外。

 腑抜けた奴等が多くなったのか……それとも環境とかのせい? けどそんなのは私が考える事じゃない。この逃げ惑う人達の憎しみは全てラジエルへと向けさせる。この国を救いたい? その口でやってるのはこれだからね。私の事責められたりしないよ。流石にこの光景には裏切っただろう獣僧兵団の空戦部隊も呆然としてる。そんな隙きをついてか、空挺は地面に降りたらしい。

 

「ラーゼ様ご無事で!!」


 そう言って来るのはグルダフの奴だ。心配しすぎだから……まあ危なかったけどね。

 

「空は完全に取られました……面目ありません!」

「そもそも戦えなんて言ってないし。それにここからでしょ」


 あの空挺、武装アンティカしか無いんだし、どうしようもないでしょ。寧ろあの空挺だけであの空を取れるんなら、地上で戦うよりもエースパイロットになった方がいい。

 

「蛇」

「わかってます。既に獣僧兵団は動かしてます。それに開放した方々が、住民の避難誘導を支持するでしょう。ですがなかなかの大軍のようですね」


 そう言って蛇は色々と教えてくれる。どうやら攻めて来てるのはあの空だけじゃなく地上からも来てるらしい。しかも数万単位で。てかあの国やばくない? 普通警告して撃ってこない? いきなりだったよ。国際条約はどうなってるのよ。まあなさそうだけど。

 

「そもそもがこことは仲が悪かったですからね。和平は勧めていました……共通の敵がいれば、それも勧めやすくなる」


 それはまさか人種の事? なかなかに嫌われてるね人種は。

 

「ですがそれも仕方なくでしたし、ここを先に潰せるのなら……と、いうことかもですね。向こうは上下関係に厳しいですからね。この大陸での絶対強者の座を示しに来たんでしょう」


 うわー、面倒くさそう。向こうにいかなくてよかったよ。てかこの大陸だけで大きな顔出来てそれでいいのかな? とも思うけど……三つくらいあるんだよね? まあここで一番なら三本の指には入るか。他の大陸がこの大陸なんて目じゃないほどに発展とか規模が全然違わない限り? 

 

「それにしても……」

「なによ?」


 蛇の眼が私とグルダフを射抜く。

 

「取り敢えず服は着替えましょう。グルダフが発情してますから。あと、魔法使えたんですね」


 魔法の方が後に言うんだ。蛇にとっては私のイヤラシイ姿のほうが不味いって事? 優先順位そっちが上? まあいいけど。グルダフは蛇に言われてその頭を垂れてる。けどチラチラのぞいてきてるけどね。膝折ってるから、そのアングルだと私の下乳覗いてるでしょ。覗くほどないんだけどね。それともへそか? へそフェチか? まあそんなグルダフは放っとく。

 

「さっきの戦闘で勉強したの。どうしようもない力でも回廊事態の道を狭めれば行けるんじゃないかってね」


 あのユニコーンのお姉さんは空間を隔てて私とゼルラグドーラの魂の回廊を絶とうとした。それは効果有ったけど、どうやら私とゼルの繋がりは空間とかでも断ち切る事は出来ないようだってわかったのだ。だから実際には私は道を狭めた訳じゃないけど、仕切りを作ったみたいな? 様はダムと同じ。私は私の中に、仕切りを幾つか設けた。

 自身の中では少しは力も操れるからね。それで出力調整だよ。溜まってる力がどこに行ってるのかは正直知らない。まあそれは別にいい。きっとゼルに戻ってるんでしょう。だからこれで私は力を使っても倒れない程度にそれを押さえる事が出来たのだ。


「これは魔法とか複雑なものじゃないけど。ただ私を守ってってやってるだけだし」

「そのわりには彼等の砲撃が全く通りませんが……」


 出力の違いじゃないかな? そもそも魔法っていかに効率よく、大威力をだせるかとか、効率よく色んな事が出来るかって事で研究されてきた物だと思う。それは当然、普通はマナには扱える限界があるからだ。その身に宿るマナしか扱えないのが常識らしい。けど私には限界などない。いや、もしかしたらゼルの限界が私の限界なのかも知れないけど、それでもきっと常識には収まりきれない程の量を私はつかえる。

 だから何も考えずにやったって出来るし、その出力も並じゃなくなるんだろう。

 

「いいじゃない、お陰でこうやってのんびり出来るんだし」


 そうこうしてる間に、獣僧兵団達が出張って来て住民の避難誘導したり、都市の防空機能がようやく空の船団を狙いだしたりと反撃の狼煙は上がってきた。けどそれでも厳しい。対応が遅れた上に、外にはまだ数万規模の陸上戦力。籠城戦をするしかない。周りには壁があるけど、そもそも敵さん空飛んでるからね。なのにこっちの航空戦力は敵に寝返ったときてる。

 降伏……も視野に入るのかもしれない。普通は。けど、それは駄目。させない。そう思ってると都市中に響き渡る声が聞こえた。これは……そう、新たなる獣王の宣言だ。彼の言葉は大衆に響き、そしてその恨みは全ての元凶ラジエルへと行くだろう。いい感じに動いてくれてるね。獣人は……獣人の国はその誇りを掲げて滅ぶ。そうそれが種の本能なのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ