Ω82
音もなく駆け出す。素早く制圧するにはどうすればいいか……武器もなく、そして相手は自分よりかなり大きい。立ち上がると二メートルはあるだろう。そんな奴にどうやって言うこと聞かせるか。けど何も策がない訳じゃない。自分たちよりも強大で大きな奴らなんていっぱいなんだ。
こういう時にどうするかの訓練くらいある。私はまずは素早く側面に回り込んで全体重掛けたタックルをかます。どれだけ重いかと思ったが、上手く頭の方へとタックルかましたから倒れてくれた。これでビクともしなかったら正直撤退するしかなかった。
けどなんとか倒れてくれた。ここから関節を取りに行く。幸いに奴らは人の形をしてる。なら関節技は効くはずだ。
「え?」
倒れた奴を見て私はそんな声を出す。なぜなら、椅子から倒れた鎧はバラバラになってたからだ。砕けた訳じゃないよ。パーツごとに中身がなかったかの様にばらけてしまってる。いや、実際中身はない。どうやってあれだけ揺れてた中で、形を保ってたのか不思議でならない。だって中身がないのに鎧だけで座って机に手を置くなんてできるか?
わからない……けど、事実としてこの鎧には中身がない。
「これも空っぽか……」
「まさか、確かに座ってた様に見えましたが……」
二人も部屋に入ってきて鎧をのぞき込んでる。信じられないよね……本当に。私はふと鎧が座ってた場所を見る。
「ラーゼ様これを!」
そこには紙……ではなく、なにか板があった。何か分からないが、直前までこの鎧が触ってたものに間違いはないだろう。なら何か情報があるかもしれない。結構ごついそれはどうやって使うのか、ちょっとわからない。
「ちょっと退いて」
ラーゼ様は椅子に座り、その板をのぞき込む。そして触ったり持ち上げたり……は重くて諦めてらっしゃった。とりあえず色々とペタペタと触ってる。
「それの腕持ってきて」
その指示に車長さんが答える。おっかなびっくり鎧の腕部分を持ってくる。その鎧の指を中央のくぼんだ所に押し当てるが、反応はない。
「今度はちゃんとはめてからやってみて」
その言葉に車長さんが腕を鎧に装着してもう一度同じことをする。その時ラーゼ様がその腕に自分の手を重ねて何かしてた。けどその様子にちょっとムッとしちゃうよね。なんか手を取り合ってるような……いや、その時だけど! 私がやればよかった。
すると今度はその中央のくぼみから光が走って表面が開いた。現れたのは緑色に光る画面?
「やりました!」
「うん」
そういって嬉しそうな二人がなんか通じ合ってるなって私は思った。けどこれでここの情報を得れる。これは大きな進歩だ。




