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Ω60

 とりあえずあれから三日が経った。その間には特に何も起こらなかった。本当にラーゼ様は移動する気はないみたいだ。なんかゴロゴロしてる。基本ソファーかベッドの上から動かない。それに一日経ったら、既に楽なワンピみたいなのに着替えて執務がないのを堪能してらっしゃる。


 素晴らしい切り替えだ。ラーゼ様はあれだよね。自分が深刻にしてると、私達が緊張を解けないと思って、こんな風にグータラしてらっしゃるんだろう。ますます何かお役に立たなくちゃ、と思う。でも……


「お茶が欲しいな」

「ただいま!!」

「ユングが入れてよ。クリエイトのは美味しくない」

「ユング指名だぞ! けどラーゼ様! 私にももう一度チャンスを!」


 大体、ユングの方がなんでもそつなくこなすんだよね。私はほら……がさつ系だとわかってるし、飯なんて腹にはいればいいと思ってるたちだから、味なんてそんな気にしない。確かに美味しいに越したことはないが、それだけだ。そんな私の入れるお茶はラーゼ様に満足して貰える訳ないとわかってるが、今はなんの役にも経ってないから頑張りをアピールしとく。


 けど練習もそんな頻繁に出来るわけじゃない。この列車はそもそもが試作機だ。マナだって満タンにしてあった訳じゃないらしい。既に今はラーゼ様のマナでなんとか機能を維持してる。けどこの列車は本当にここだけで生活できる様になってたらしい。水とか火とか起こせるから、お風呂も料理も出来る。勿論作るのはユングだ。車長さんは料理は出来ないらしい。


 まあそこは車長だしね。料理長じゃないからしょうがない。ユングの奴はこれはこれでなかなか限られて食材で色んなものを作りやがる。私はうざがられてもキッチンに一緒に立って邪魔を……じゃなく、料理の勉強をしてる。ユングは何も教えてくれない。


 精々食材をこうこうこういう風に切っといて――くらいだ。さすがの私も切るくらい出来るからね。寧ろ切るのは得意だ。無駄に食材に飾り切りとかしてたらユングに怒られた。まさに無駄だからだそうだ。私の唯一の見せ場を取るとは……ユングの奴もラーゼ様の好感度狙ってきてるな。


 なので今はなんとか美味しく食べられる料理を作れるように奮闘中だ。一応、ラーゼ様達もユングに負担が行ってるってのは理解してるみたいで、私を止めることはなさらない。


「どうぞ」

「うん。やっぱり美味しいね」


 良い教育受けてるね――となっとくしたように呟き、お茶を嗜むラーゼ様。ユングはその様子を見ながら顔を赤くしてる。普通はこんなラフな格好は見ようとしても見れる物じゃないからね。ユングはこの列車の中でもあんまりラーゼ様を見ない様にしてる。

 年頃の男子には刺激が強すぎるのだろう。それなのに発散できる場がないしね。ユングだから襲うなんて手段に出るとは思わないが、一応私が夜は警備してる。


「ラーゼ様、そろそろ食材が……」

「うーん、マナを物質に変換するのとかない?」

「それは流石に……」


 そういう研究でもあるのかな? けどこれには積んでないのか、車長さんは苦し気にいった。食材が無いとなると取ってこないといけない。でないと私達は飢え死にだ。でも問題がある……


「外に出ても大丈夫でしょうか?」

「そもそもここって生き物いるの? 何にも見かけないわよ」


 一つは外に出る事自体で、そしてもう一つの問題は生き物を全く見ない事だ。この三日間一度も見てない。これはどうなのか? ただ生き物が近くにいないだけなのか……それともこの車窓の景色と同じで、この星は不毛の大地なのだろうか? 

 わからない……けど、とりあえず食料を調達しないといけないのは確実だ。さて……どうしたものか……私は必死に考えた案をここで披露して見せる。


「気合で……どうにかできませんかね?」


 その時の皆の表情といったら……まさにバカを見る目をしてたと思う。失礼な、言ってみただけなのに!

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