#77
(不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味いよーーーー!!)
これは間違いなく絶体絶命のピンチ。まさかゼルラグドーラとの魂の回廊が途切れるなんて……
(ん? 待てよ)
もう少し集中してみる。するとわずかだけど、ゼルの力を感じる。少しだけど、安心感が戻ってきた。不味い、あいつらめっちゃ見てる。私の動揺をつぶさに観察してる感じ。効果があったのかわかってない? それならいつも通りにしたほうがいい。
「さて、少し遊びましょうか?」
そう言って一角のお姉さんが自身の角を抜き取った。マジで!? そうなるの!? と驚きが隠せない。だって……だってそれは予想外。てかなんか抜き去られた角もまた光ってる。自身こそが最強の武器って事? なにその戦闘種族。てか向こうはやる気満々……それはそうだよね。だってさっきのが効果あるか確かめたいだろうし。私は取り敢えず息を意識的にして落ち着きを取り戻す。
そしてゆっくりと歩いてくる一角お姉さんを見る。
(笑ってるよ……)
怖!! あの顔は絶対に戦闘狂でしょ。関わり合いになりたくない。けど、そうもいってられないか。でも僅かに繋がりはあるとは言っても、いつもみたいに無尽蔵に力を行使は出来ないし、多分めちゃくちゃその力も小さい……ここはやはり――
「あの、ちょっとおトイレに行きますね」
そう言って私は自然にドアの方を向いてガチャリ…………
「この部屋と外は隔絶されてます。よろしかったらここで行いますか? 排尿? それとも大きい方でしたか? くすくす」
やっぱり開かない。てかこの一角お姉さん、性格悪くない? めっちゃ見下されてる様な気がする。こんな美少女に排尿とか大きい方とかいう? しかもここでどうぞ……とか、嫌味でしかない。出来るわけ無いじゃん。んっ待てよ?
「みたいの?」
「ふざけないで! そんなにしたいのなら漏らさせてあげますよ!!」
そう言って一角お姉さんは持った角を真っ直ぐに突き刺してくる。私は咄嗟に避け――ようとしたけど、全然駄目で突き刺された。まあ全身に巡らせてた力は残ってるからチクってしかしなかったけど、扉に叩きつけられた。さっきから思ってたけど、この扉とか壁が壊れないのと隔絶されてるから?
「流石は一発は防ぎますか。でもコレならどうです?」
次の瞬間、見えない突きが連続で放たれる。ヤバイ……どんどん力が減っていってるのがわかる。本当なら一撃で消滅してしまう様な力なんだろう。けどそれをゼルラグドーラの力で防いでる。防ぐと同時に減る力と僅かだけど供給されてる力……それは前者の方が大きい。つまりは間に合ってない。今までに感じたことのない魔力の枯渇……それが起こり得る状況。
そしてそれが起きた時、私はこの角に……
「やって……くれるじゃない」
最悪な想像が頭をよぎる。けどそれはそう遠くない時に起きる。かと言ってどうすることも……残りの全てを開放すれば彼女を倒せる? 分からない。けど、この空間は壊せるんじゃないだろうか? でもその後は? 私は何もできなくなる。蛇やグルダフに任せる? それじゃ駄目な気がする。その時だった。ズブ――と肉を貫く感触が伝わる。そして引き抜かれたと同時に、真っ赤な血が吹き出した。
「あっ――ああああああああああああああ!!」
いたいたいたいたいたたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいた!
「いい顔してますよ。さあもっと泣いてください!」
私の体に無数の穴が空いていく。どうにも出来ない私はされるがままに串刺しになってた。流れ出る……血が……力が……魂が。