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Ω2

 亜子を送る日。それはずっと前、まあ一年前からその計画はあった。だって亜子をこの世界へと留めてる理由はほぼなくなったんだ。亜子はそもそもミリアとかのせいでこっちの世界にわたってきた。友達だったミリアにもう一度再開したいとか、なんとかが願いだった。

 そしてその願いはかなった。ミリアは存在こそ変わったが、カタヤと再会したし、ミリアが率いる魔族のおかげで人種もまだ生きている。魔族がいるから、そこまで人種が戦わなくてよくなったしね。亜子はミリアが果たせなかった責任を果たす為にアンティカに乗ってた。


 けど、もうその必要もない。そしてエデンは戻ってきた。エデンの悠久の知識と、超越された技術はこの一年でかなり掘り起こされた。けどそうなってエデンがにぎやかになっていくと、ゼルは「うるさい」と言ってどっかいった。


 まあどっかって言って今や、いつでも私はゼルを呼び出せるんだけどね。やっぱり私もずっとクリスタルウッドにだけ頼る訳にはいかない。だってクリスタルウッドの力はミリアも使える。ミリアと敵対するのは決定事項なので、ミリアを出し抜ける力が必要なのだ。


 それを考えるのは向こうも同じだろう。だからこそ、ミリアはよく戦ってるんだろう。どうやら魔王とは力を奪い取れるみたいな? そんな情報がある。ミリアの力が私の想像を超えないことを祈ろう。今日はそのミリアも来るからそこで少し探りを入れよう。


 まあけどまずは亜子だ。私は一緒についてきた従者に扉をノックさせる。そして中から帰ってきた声を待って扉を開けさせる。中には制服に身を包む亜子がいた。その姿は初めて会った時と既視感がある。まあこの姿が出会いだったしね。


 亜子は制服を大切に保管してたのだ。でも実際既に亜子がこっちに来て三年は経ってる。本当ならもうあの制服を着る年齢は過ぎてるのかもしれない。


「コスプレか……」

「ちょっと変な事言わないでよ」


 私の呟きに亜子が眉間にしわを寄せて反応する。けど直ぐに、スカートを摘まんでこういった。


「懐かしい……けど……」

「覚えてない?」

「……うん」


 そう、亜子はこの三年でそのマナがかなりこっちに染まってる。メルが言っていた。こっちのマナに染まり切ると完全に向こうの世界の事を忘れると。その期間は実はとっくに過ぎてるが、まだ亜子のマナは染まり切ってない。それは私が亜子の記憶を補完するような物を用意したからだ。


 まあ実際用意したのは私ではないが、私の力を使ったから私のおかげみたいなものだ。けどそれにも限界はあって、消え行く記憶を別の場所に保管させてたんだが、それを今日亜子に返そう。その為に私は先にここに来たんだ。


「亜子、元気でね」

「帰って欲しくないとか言わないのね」

「まあ、もう亜子がいなくてもどうにかなるし」

「あんたはそういう奴ね……」


 ガッカリしてる亜子。けど納得もしてるね。私は気になったことを聞く。


「鉄血種の血は?」

「うん……もう私はほぼ人種だよ。エデンの技術のおかげね」


 そう亜子は一時期人から離れてたが、今は人になってる。これもエデンの技術の賜物だ。でも鉄血種の力は強かったからね。惜しいとはおもった。でも、あの血は元の世界に戻るならまずい。だって事実、何百、いや何千と生きる事になったかもしれない。


 ここでならそれは別におかしくないが、元の地球ではおかしい事だ。世界には世界の理があるだろう。その理から外れたままで帰ったら、どうなるか……すくなくともしあわせになれないだろう。そんなのは私は嫌だ。ここまで一緒にやってきたんだから、亜子には幸せになって欲しい。


「よかった。ではいきましょうか」


 私は亜子のエスコート役だ。手を差し出し、その手に亜子が手を重ねる。私たちは二人で会場に向かって歩き出す。

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