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√77

「さて――」


 その一言で、魔王ミリアの雰囲気が変わる。今までは可愛い女の闘いだった。キャットファイトという奴だ。けど今は違う。空気が重い。まるで空気が伸し掛かってくるようだ。やる気になっちゃった? ここまで来て手ぶらで帰る気なんてそりゃあないよね。


 流石にプリムローズの皆も正気に戻って、私を守ろうと前にでる。確かに彼女たちも難局を経験して多少戦えるようにはなってる。けど、ダメだ。あれはダメ。相手が悪すぎる。世界の守りさえも、魔王は抜けるかもしれない。


「下がりなさいあんた達」

「嫌ですラーゼ様!」

「うん!」

「私たちもただ守られるだけではないのです!」

「しょうがないですね~」


 むむ……皆私の言葉を無視するとは。それだけ慕われてるって事だよね。悪い気はしない。けどだからこそ、魔王と対峙させる訳にはいかないよ。

 魔王ミリアはゆっくと自分のお腹の位置に手を動かす。皆がその一挙手一投足をつぶさに見て警戒してる。けど、魔王ミリアはそんな事を気にしてない様に、こういった。


「――腹が減ったぞ。ここは客人にお茶も茶菓子もださんのか?」

「は?」


 私は言葉にしてそういったが、きっとプリムローズの皆も同じことを思ったはずだ。だってみんなあんぐりしてるもん。でもそうなるでしょ。だって腹減ったって……


「そもそもあんた客人なの? とっちかって言うと侵略者でしょ?」

「ちゃんと王の許可は得ておる。来賓だぞ?」


 そういって何やら書状をどこからともなく出した。何か黒い渦の様な所に手を突っ込むとそれが出てきた。何荒れ? 異空間収納みたいな物? 便利そうだから是非に仕組みを教えてほしい。いや、私に説明されてもわからないから、わかる奴に……待てよ、そういえばエデンって別の空間にあったよね? 羽持ち達ならこのくらいの芸当の仕組みはわかってるんじゃない?


 あいつら、私が何か質問しないとあんまり情報くれないからね……後でやり方を教えてもらおう。力の使い方のコツさえ教えてもらえればいい。理屈や理論なんて必要ないのだ。まあ私の中には案外沢山の知識とか理論が実はあるが、それを活用したことは驚く程にすくない。

 だって勝手に入ってくるだけで、使い道知らないからね。でも力がつかえれは私的には問題ないので別にいい。


「来賓……ね」

「ラーゼ様は、王は確か――」


 そういうミラに私は頷くよ。だって今は王都とかこいつらの手に落ちてるも同然だ。そんな気は王都にはないだろうが、王は既にこいつの傀儡。そんな王が出した来賓待遇なんて意味ないよね? そもそも本当に来賓扱いされたいのなら、アンティカで攻撃する必要なんてなかったはずだ。


「そっちがいきなり攻撃してきたような気がするわよ。てか現在進行形でね」


 今もアンティカの戦いは続いてる。どうやら亜子は二機を大破させずに制圧しようとしてるみたいだ。周囲に赤いマナが漂ってる。確かにあれが満ちれば、ある程度動きを制限できる。けど、もともとあの中でもあの二機は動けるように対策されてる訳で……でも十分でもある。


 流石に出力まで抑えられたら、今のゼロに勝ち目はないとカタヤ達も思うだろうからね。まあまともな状態なら……だけど。


「ふむ、そういえばこの領と王国側は戦争状態だったな」


 白々しいことこの上ない事をこいつは宣ってる。いや、全部あんたの仕業だよね!?


「我は魔族の来賓なのでアンティカに命令権はない。実を言うとこっちの方がよさげだったので、鞍替えしようと思ってな。聞いたところ、人種の国を支えてるのはここなのであろう? いや、世界を……か。なので、かくまってくれ」


 こいつ……あくまで国のごたごたは知らぬ存ぜぬを通す気か。こっちには魔族の参戦の情報はあるっての。こいつを追い返す理由は色々とあるよ。けど……


(どうしたものか……)


 どうしたらいいのか、ちょっと私だけじゃ判断しにくい。けど、今ここでこいつを暴れさせたくはない。私にはビシバシと危険信号がなってる。こういう時は直感を信じるべきだよね。


「どうしてくれる?」


 試すような視線が突き刺さる。なら私はそれに笑って返してあげようじゃない。余裕たっぷりに見せてあげる。器の大きさの違いって奴をね。


「魔王ミリア、来賓として迎えましょう」

「「「ラーゼ様!!」」」


 プリムローズの皆が驚嘆してるが、これは決定だ。私は魔王ミリアをまっすぐに見据える。

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