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√58

 あの固い甲殻を貫けるとは天晴だ。だが、彼女は確か自分ではあの体に傷をつけるのは無理だと判断してたような? だが実際今、あの甲殻を彼女は貫いてる。


「自分の把握してる以上の力を出してるということでしょうか」


 蛇はそう呟く。そしてそれがどこからくる力なのか、蛇は知ってる。


「愛ゆえに……ということですか……」


 それに応える気がない蛇は気まずい気がしてるが、これは絶好の機会だ。蛇の立場としては見逃せるわけはない。


「アンサンブルバルン様!!」


 彼女のその声でそう思えた。彼女はやっぱりかなり無茶をしたみたいだ。槍を握る手はその節々が裂けていた。ここまでやってくれた彼女の心意気を無駄には出来ない。


 そう考えた蛇はただ一つの単純な目的だけを胸に動く。それは目の前の敵を倒すということだ。鞭がしなる。長く後ろへと伸びた鞭が勢いをつけてまっすぐに突進してく。


 きっかけを作った彼女は既にその場から離れてる。目印は彼女の貫いた部分。そこに向かって蛇の鞭がまっすぐに進む。当たった瞬間、これまでの抵抗感が嘘の様だった。まるで柔らかい泥にでも突っ込んだかのような感覚。

 

(行ける!!)


 やはりだが、どんな生物でも中までは固くはない。


「その全身を貫いて上げます!」


 普通ならまっすぐに入ってまっすぐに出るだけの筈だが、蛇はこの好機にそんな程度のダメージで終わらせる気はない。蛇の武器は鞭だ。なら、鞭にしかできない軌道がある。


 蛇の鞭は曲がりうねって化け物の体の中を進んでいく。化け物は流石に痛いのか大きくうねるが、体内を走ってる鞭から逃れることは出来ない。


「こざかしい真似をする」


 頭部部分から再び人型の奴が現れる。体と頭を再び切り離したか。体だけなら、痛覚を無視できるのかもしれない。だがだからってダメージがなくなったわけじゃないだろう。


「貴様らにまで使うのはどうかと思ってたが、見せてやろう我の力を」


 どうやらようやく蛇たちを意識したらしい。そして奴の言う力……だがそんなの見る気はないと蛇は思ってる。もともと奴がまともに自分たちとぶつかってないと蛇はわかってた。その巨体と単純な攻撃しかしてなったからだ。


 こいつには力がある筈。だって戦場の国軍が化け物へと変わり果ててた。その力。だから見せなくてもいい。


「アンサンブルバルン様! 私が小さい方を相手にします」

「少しの間でいいですよ。無茶はしない様に!」

「大丈夫です! 私は絶対に死にませんから!!」


 そういって彼女は突撃してく。それが問題なんだが……彼女は世界の守りを笠に直上的になってる。確かにあれを破れる存在はそうそういないだろう。

 だが、世界のエネルギーは……


「急ぎましょう」


 そういって暴れる化け物の体の中の鞭を操ってうまく高度を落とすように誘導する。ここまでも届くが、だがなるべく地上に近い方がいい。雲に入り、視界がなくなる。だが抜けた瞬間、眩しいくらいの日差しが入ってきた。下は戦場だ。


 その戦場へとどんどん向かって降りていく。そしてある一定の距離の所で蛇は鞭を体内から戻して、今度は彼女の体を縛る。


 そして一気に飛び降りた。


「やりなさい!」


 戦場にあるダンプから一つの光が発射される。それは国軍が喜々として持参した主力だ。国軍は既に瓦解してる。人としてなしてない。なら、こちらが有効に使ってあげましょう――ということだ。


 一撃では全てを葬り去ることは出来ない。だが、頭がいる位置には当たったはずだ。地上に降り立った蛇たちは上を見上げる。戦場に落ちる影はだんだんと大きくなってる。


 落ちてくる――そう悟った蛇は皆に撤退命令を出した。

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