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「ぐふ……」
蛇の口から血が吐き出された。余裕そうな顔をしてても蛇も無理をしてた。実際過剰なマナが引き出してた。それの反動が来てる。直ぐに武器の方へと流してたとはいえ、確かに巨大なマナが蛇の体をめぐってたんだ。完全に影響ないなんてありえない。
「この程度……」
そういって蛇は今度こそ新たに出した鞭を伸ばす。今度は頭の方にだ。まあ明確に頭だとわかるような化け物ではない。だけど、何となくこっちが頭だとおもった。尻尾は細くなっていってたからな。とりあえず頭だと思う方にも蛇の様な鞭を向けた。流石に自分の体に当たるのは嫌なのか、攻撃は止まってた。
あとは丸めて締め上げるだけだ。そう蛇は思ってた。
「ここまで来れる奴がいたか」
それは目の前にいた。このデカい化け物と同じようなてかってる肌をした奴だ。てか多分、このデカい化け物の頭脳部分ではないかと蛇は思った。だって頭があるような部分は見当たらなかったからだ。それがこの目の前にいきなり現れた奴ではないだろうか。
目の間にいきなりあらわれたそいつは、足部分がこのデカい化け物と融合してる。もしかしたら生えて来たのか? と蛇は考えた。
「お邪魔してますよ。いえ、少しこの存在が邪魔だったので謙虚になってもらおうと思ってですね」
「なるほど。確かに我の体は少々大きいな」
少々? ではないが……と蛇は思った。だが、ここで突っ込むのはどうかと思う蛇でもある。今は案外友好的だ。表面上は……だが。蛇はちゃんと感じてた。この存在が発する殺気を。声はとても穏やかで、まるで風さえない水面のごとく……だが、発せられてる殺気は台風の時の荒波だ。
これで警戒しない奴はバカだと思う程。慎重に蛇はタイミングを計る。
「だが、必要なのだ。そういってくれたのだ。魔王様は。それを……それをそれをそれを、貴公は不要ともうすか!?」
奴の蟻の様な口が大きく開く。ここだと思った。奴の口が蛇に届く前に、奴の頭上から奴の体自身が降ってきてぐちゃっと潰す。
「ふう、本当はもって細かく丸めるつもりだったんですがね」
そういって緊張してた息を吐くを蛇。それは応える者がいないと思って吐いた言葉だ。だが、いた。応える者が。
「心配には及ばんよ。すぐに我が解放するからな」
その声は今降らせたデカい化け物の先端部分と過程出来る所からきこえた。そこに目をやると、もりもりとその場所が盛り上がっていく。そしてさっきの奴が全くノーダメージで現れた。
「随分と元気そうですね」
「そうでもない。誰かさんが我を圧縮しようとするのでな」
二人の間にピリピリした空気が張られる。最初からだが、もう建前もここまでという空気だ。蛇はこの巨体を縛る為に、その場から動けない。圧倒的に不利。だが、諦めるつもりなんてない。ラーゼに矛を向けたのは人種の王というか、その黒幕がやはり魔王だったと判明したわけだ。
なら償いはさせる……そのつもりだった。