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√22

「本当によろしいのですね」


 私は通信の向こうの相手に再度そう問いかける。最初、これで戦いは終わると思った。彼はハゲだが、優秀だ。だから信頼してる。だがそんな彼が口にした言葉は「開戦」だった。今の光景を見てる奴なら既に開戦してるというかもしれない。

 実際に攻撃は受けてるからな。だが、こちらから攻撃はしてない。こちらは受けに徹してる。一体何かい奴らは主砲を撃ち、こちらは受け止めたか。向こうも機動性はこちらが上とわかってるから、外に展開して大回りをする……なんてことはしようとはしない。


 そんな事をしてもこちらを振り切れるわけないと知ってるからだ。だから今まで単純だった。向こうは動かず撃つだけ。そしてこちらは動かずに受け止めるだけ。勝敗が決するとしたら、それはエネルギーがなくなるか、こちらの盾が向こうの砲撃で打ち砕かれた時。


 実際、こっちは機動性を重視してるから、本当は無理をしてる。幾機もの飛空艇の力をリンクさせて奴らの主砲を防げるだけの障壁を作り出してるのだ。既に何機かは後ろに下がらせてる。そしてここに来て……反転しての攻勢に出よとの指令。

 すでにこちら側は数が減ってる……と文句を言ってもいいのかもしれない。私は自身の腕の毛並みを確かめながら通信先のハゲ様に告げる。


「これで間違ってないと貴方は思ってらっしゃると。ラーゼ様に叱られるのは嫌ですよ?」

『それはわからない。私は怒られるかもしれないな。だが、ラーゼ様の治める地をみすみすやる気はない』

「そうですね。わかりました」


 確かにその通り。何を話したかはわからないが、ハゲ様からはどこか疲れが感じれた。いや、この人はいつだって疲れてはいるか。


「向こうもその気ということは、援軍を想定した方がいいということですね」

『そうだな。すまない』

「いえいえ、もしかしたらかの有名なアンティカと一戦交える事が出来ません。楽しみですよ。本当に」

『我らは他領を取り込むつもりだ。こちらにつく利点はあるからな。取り込めるはずだ。まあそれでもすべてという訳にはいかないだろうが……こちらも援軍と、地上軍も動かすことになるだろう』

「こういう時こそ、マナ生命体が使えたのに無理なのですか?」


 その言葉にハゲ様は大きなため息を返答として返してくれた。いや、彼的にはそれは返答ではなかったかもしれないが、こちらにはそれだけで分かった。


『メル様もいつの間にかおられぬ。ラーゼ様とグルダフ殿、それとメル様が居なければマナ生命体は使えないんだよ』

「それならば仕方ないですな。空の敵はこちらがなんとしても止めて見せましょう」

『頼む』


 通信が終わり、前を見る。向こうに変化はない。機動性があまりない向こうは砲撃一辺倒になるのは仕方ない。


「いや、飛空部隊を出してきたか」


 闇夜に紛れてわかりにくいが、船の底から小さい物が飛び出てる。でも飛行ユニットはまだそこまで配備されてる訳じゃない。それにこちらにだってある。いくつかの飛空艇が高度を落としてる。中にいる兵士達を地上に卸すつもりか。そうなると厄介だ。


「全機攻撃に転じよ! 誰一人として偉大なるラーゼ様の地を踏ませるな!!」


 見せつけてやろう。この船の真骨頂を。

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