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√21

「これで、よかったのだろうか?」


 静かな空間にそんな声が響く。視線の先には大きな窓に立つ一人の男。その男を見て王は思う。


(はて、誰だったろうか?)


 ――と。だが直後その思いはどこかへ掻き消えた。記憶が浮かび上がる様に思い出されたからだ。いつの間にかこちらを見てる彼の瞳が妖しく紫に輝いてるのは何か関係があってもわからない。


「大丈夫ですよ。この国は貴方を頂点としてるのです。従わないのなら、粛清するしかありません」

「だが……あいてはファイラルだ。我が軍だけでは……」

 

 こんな事を言うのも……と王はおもう。だが、事実としてファイラルという領の軍が強力なのは自明の理。なにせここまで人種である下等種が勢力を拡大させることが出来たのはあの領の……ひいてはラーゼのおかげ。それは誰もが認める事だと知ってるのだ。


「ならば、我らも出ましょう。その許可をくれますか」

「おおそうか。確かにお主たちならファイラルにも引けを取りはしないだろう。魔王殿に感謝を」

「いえいえ」


 その時、疑問が王の頭に浮かぶ。それは『魔王』というワードに関してだ。


(うむ……魔王? 魔王は……うむ友か)


 妖しく光る瞳を見てると、そう納得できた。


「ラーゼと精鋭が出てるらしい。この間がチャンスだ。なるべく血は抑えてくれるか?」

「容易い事です。ファイラルを王の元に献上いたしましょう。そして戻ってきたラーゼ嬢も。側室にでもされてみればどうですか?」

「側室か……」


 王は「あれは王の器だと思うが……」とか呟きつつもゴクリと喉を鳴らす。なぜなら、それは初めてラーゼを見た時から夢見てた事だからだ。王として、王だから何でも出来ると思ってた。だが、実際には色々と王にも制限はあるし、王だからできないこともある。


 ファイラルの領主という立場は力があり過ぎた。これが弱小の領なら、王の言葉に反抗など出来るはずもない。だが、ファイラルは違う。この国を支えるだけの領だ。今や王とラーゼは対等、もしくは向こうが上かもしれなかった。

 一応向こうはこちらを立てる様にうかがってくれてはいたが、王としては「うむ」と仰々しく頷くしか出来なかった。何をするにしても、提案されても「うむ」である。それはただ首を縦に振る人形とかわらない。ファイラルが欲しかったのは王の許可は取れてるという建前でしかなく、こちらとしてはそれで王としての位置を確認してたに過ぎないのだ。


 だからラーゼに何かをするなど……王だからこそできなかった。だが、彼女がファイラルという土地を失い、ただの女になるのであれば……


(本当なら正妻でもよいが……さすがにそれは……な)


 自分の今の正妻が脳裏をよぎる。体がブルっと震える王。だがその後に美しいドレスを纏って傍らにいるラーゼを思い浮かべる。それはまさに王にふさわしい光景だと思った。王のそばにいるのは比類なき美の象徴であれば完璧だ――と。


「それでは王よ。私も出ますのでこれで」


 そういって彼は窓を開け放つ。冷たい夜の風が中に入ってくる。彼は窓枠に足をかけそこから飛び降りた。一瞬消える姿。だが直ぐにバサバサという音と共にその姿がみえる。だがそれは銀髪だけが同じの化け物だった。でもそれをみても王は動揺などしない。

 そういう物だと思い込んでるからだ。そして王都の上空に沢山の化け物が姿をあらわした。

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