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√20

 言ってしまった。私は一人薄暗い部屋で震えていた。すでに王との交信は切れている。いや、正確にいうなれば、切られたと言った方がいい。だが言い訳をするならば、仕方なかった。いや自分の力が足りないのは重々承知。

 結局の所、ファイラルというこの領に……いや、引いてはラーゼ様に敗北という不名誉な事実を背負わせたくなかった。まああの方はそんな物、気にもしないかもしれないし、この結果の方を問題視するかもしれない。


「私は……クビかもしれんな」


 一つ、貴重な毛髪が抜け落ちる。ハゲと皆は言うが、全ての毛髪がなくなったわけではない。だけど、日々の激務に追われ、なれない上に立つもの、そしてラーゼ様の代役としての身にすぎる役職でストレスが溜まり、毛髪は日々落ちていく。


 そしてそんな貴重な毛髪が今一つ散った。


「こうなってはもう仕方ない……か。それにしてもあの男は……」

 

 結局、王の傍らに現れたあの存在を紹介してもらえ無かった。普通そんな事はない。あり得ない。どんな貴族だってファイラルという領は重要だ。顔をつなぐ為にも必ず名乗られてきた。立場的にこちらから名乗った方が良かったのかもしれないが……私と王と面識があったし、闖入者はあちら。それなら貴族のマナー的にもあちらからまず名乗るべきだったはず。

 結局、いつ名乗るのかと思ったまま、結局名乗らずにそのつま憤慨した王に通信は切られた。だが、あそこまで王が怒ったのもある意味であの男のせいだ。こちらの言葉……提案を王族を軽んじ、貶める目的だろうと吹き込み王に怒りを誘発されてる様にみえた。


「あれは王が我々と懇意にすることを嫌う貴族派閥の者?」


 だが、おかしくはある。我らの事を好いてない貴族が多い事はわかってるが、それでも排除よりも利用したい筈だ。こんなご時世、この国は既にファイラルという領があらねばなり立たない。だからこそ、多少王の方に譲歩させれると思ったのだが……それはあの男によって阻まれた。


 王にこちらのない意図まで吹き込まれて、今頃は本体まで動かそうとしてるかもしれない。


「実際、この領だけで全てを撃退する事はできるか?」


 結論としては惜しげもなくすべての力を使えば可能だろう。ファイラルという領は最新だ。そして他領にはない力、人種だけではない種が多くいる。数では圧倒的に負けてるが、質ではこちらが上。それにすべての領が軍を動かせるわけでもない。


「泥沼化することは避けたい……」


 すでに火蓋は斬られ、そして戦火は拡大しようとしてる。最小限でとどめたかったが、それは儚い夢と消えたのだ。だが、人種同士で戦ってる余裕など……いまの世にあるだろうか? そんな暇はない。ラーゼ様だってそういうだろう。


「取り込める領は取り込んで……国を二分する戦い。だが……これで勝利をすれば……ラーゼ様は女王……か」


 その時、組織の中に私はいないかもしれない。だが、玉座に座る彼女を想像すると、今の王などよりもよっぽどしっくり来る。そう、ラーゼ様には頂こそが最も似合う。あの方の輝きには頂がふさわしい。出なければ、輝きが地上を照らせないではないか。


 私は手元の機器を操作して、通信をつなげる。出てきた顔は鳥の頭の艦長だ。彼に短く私は命令を伝える。


「反撃を開始せよ。我らが王に玉座を渡す時が来た」

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