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『我らは国王陛下直轄の軍である。そこを通してもらおう。この命令は勅命である』
聞こえてきた通信ではそんな事を言っている。確かに奴らは王都軍。国の首都を守る最終防衛ラインで彼らが動く時……それは勅命だろう。でも実際この国の王が進んでこのファイラル領に軍を動かすとは思えない。なぜなら、今この国を支えてるのがどこか――といったらこの領に他ならないからだ。
そんな領を簡単に切り捨てる事なんてできない……筈だが、事実として軍はいる。彼らは納得してるのだろうか? 今、世界は大きく揺れている。三つの星が近づき、それによってかの星のマナがこの星を侵食してる。
それによってかの星のマナの影響を受けた生物は変異して凶暴化まだしてる。そのせいで先日近くの領が堕ちたというのに……同じ国の者が争っててどうなるというのか。王都は中央にあるから魔物の被害なんてないと思い込んでるのか……それでもどんどんと周囲の領が落ちていけば、最終的に国が堕ちるだろうに。
『退かぬのか! 退かぬのというのなら……力づくで通らせて貰うぞ!!』
こちらからは何も言わない。こっちも軍人……むこうも軍人だ。軍人に言葉は意味をなさない。納得してなくても仕事では彼らは止まらないだろう。それはこちらも同じだからわかる。だからこちらは淡々と奴らの進行を阻むしかない。
攻撃はしない阻むだけだ。向こうの艦の先端の方に光が集まってる。流石にあんなのを食らえばひとたまりもない。だからといって避ける事は出来ない。簡単だとしても……だ。だからこちらも支持を飛ばす。
「艦隊で魔力を並列共有。障壁を構築せよ!」
こちらは艦隊を全て使って強力な障壁を構築する。矛と盾のぶつかり合いだ。向こうの艦隊から放たれる夜を切り裂く様な砲撃。艦の中を光が埋め尽くす。だが……その光が我々までとどくことはない。障壁は強固な盾となって砲撃を防ぎきる。
「これで引いてくれるといいんですが……」
「そうもいかんよ。彼らだってなんの命令も無しに軍を引かせることなど出来ない」
その証拠に再び向こうは再充填を始めてる。ここを狙えば簡単に落とせる。あれだけの攻撃だ。連続して放てるものじゃない。本当に向こうの軍は勝てる思って攻め込んでるのか……こちらにだって向こうの飛空艇の情報はある。つまりは性能とかは筒抜けだ。
対してこっちの艦は領で独自に開発してた最新鋭艦。ある程度の情報は王の方にも渡してるだろうが、全てではないはずだ。情報とはかくも大切なものだ。それをこっちの方が圧倒的に握ってる。この進軍にはなんの意味もない。なのに……
そんな事を考えてると、再び砲撃がきた。船が揺れる。だが大丈夫だ。まだ破られはしない。この無意味な戦い。それを終わらせられるのは我らではない。我らはただ耐えるしかない。だから私は今も必死に働いてるであろう人にこの言葉送る。
「頼みますよ、ハゲ様」