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#61

「ラーゼ……様!!」

「ん? どしたのうさぎっ子? 私が恋しくなったのなら嬉しいな」


 ウキウキでそういう私と対象的に、うさぎっ子はなんだかご立腹なご様子。ここには近づきもしなかったのに、来たって事はもしかしてアレかな? 街では既に噂になってるようだしね。

 

「そんな訳ないじゃない! それよりもラジエル様が……シンデドゥル家がお家取り潰しって本当なの! ……ですか?」


 なんか口調が一定してないけど、私が立場上という認識が抜け切らないんだろう。根っからの服従体質だもんねうさぎっ子。けどやっぱりそれか。てかそれしかないよね。けど私の所に真っ先に来るなんて勘いいね。大切な人を思う女の勘が働いたのかな? ラジエルの奴、死ねばいいのに。まあこれから死よりも辛い人生が待ってるだろうけどね。

 

「それは本当。大胆よね、獣王を殺して、そして人種に国を売ろうとしてたんだもの。なんという大罪人。けどそれで一家一族処刑じゃないのは充分優しい処罰だと思うけど?」


 普通は一族全員打ち切りされるレベルの犯行だよ。まあでもほら……そこまでは流石にねって思ったから当主だけが晒し首になる予定である。その他は一族全員国外追放……これで私の前からラジエルが消えてくれるというわけだ。虫は遠ざけないとね。

 

「でも……こんなのおかしいって……そんな事実無いってラジエル様は!」

「犯人は得てしてそういうものようさぎっ子。そもそもやってました――なんて言う犯人居るわけないじゃない」


 私はソファーに腰掛けてお茶をすすりながらそうしれっという。けどうさぎっ子は私を疑ってるようで聞いてくる。

 

「誰かの陰謀だと……私には貴女がやったって……そう思える」

「証拠でも?」

「それはないですけど……けど、どうなの? 違うって私の目を見て言える!?」

「違う」


 ふふ、そんなの簡単だよ。うさぎっ子の好感度はこれ以上下げたくないし、ここは嘘を突き通そう。そもそもうさぎっ子じゃ、どうあっても真実になんてたどり着けないし。しばらく時間も経てば、うさぎっ子もあんな奴の事は忘れてくれるでしょ。

 

「……そう、ですか」


 そう言ってうさぎっ子は一歩下がる。少しは落ち着いたかな? 

 

「お茶でも飲んでいって。珍しのが手に入ったの。私、久々にうさぎっ子が入れたお茶飲みたいなー」

「私、もうここには来ません」

「え?」


 なんだろう、何かうさぎっ子がとても遠くに見える。数歩歩けばつかめるはずの距離……なのに遠くに感じる。

 

「奉公に出させて貰ってた主人の方にも出ていくうまを伝えました」

「えっと……じゃあどこに行っちゃうのかな?」


 私の頭には考えたくない可能性が浮かび上がってた。いや、それは嫌だようさぎっ子! そう思うも、彼女は首に着いてた首輪を外して床におく。それは私とうさぎっ子を形の上だけでも縛ってた首輪。蛇が私の人質にうさぎっ子を使った時の物。もう殆ど意味を成してなかったそれは、私とうさぎっ子の唯一の繋がりみたいに感じてたのに……

 

「私はラジエル様と共にこの国を出ます」

「おふ……」


 変な声とともにクラっと来た。なんでそうなるの? てかそんなに進展してたの? いつの間に……いつの間に?

 

「なんでそこまで……まさかもう突っ込まれちゃったの!?」

「つっ!? 女の子がそんなはしたない事を言ってはいけません! それにそんな事実はないですから!」


 なんだまだうさぎっ子は処女か。安心した。うさぎっ子の処女を奪ってたら、逃さず殺す方にプラン変更してたよ。

 

「私はただあの方を信じてます。そして支えたい。だからあの方と行くことにしました。誤解してたようですのですみません。けど……私達は諦めません。必ず貴女の前にもう一度立って見せます」


 何か凄い決意を秘めた目でうさぎっ子は見てくる。そして一礼してエレベーターを降りてった。うさぎっ子……本当は行かせたくなんか無かったけど、あの娘頑固だしね。もう一度私の前にくるらしいし、その時は……そうだね、その時こそラジエル殺してうさぎっ子を手に入れよう。そうしよう。

 

「またねうさぎっ子」


 外を見下ろし、人混みに消える彼女の背にそう微笑みかける。

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