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Δ142

 僕はその手の中に視線を向ける。ただの視線ではない。憎しみのこもった視線だ。けどそれが分かる奴はいないか。だって今の僕はアンティカだ。アンティカの目に感情はのらない。いや時々光るからその時は何か伝わる物があるかもしれないが……今の自分はどうだろうか? その目は光ってるか? 


(捕まえたぞ!!)


 魂と体が引かれ合う。それはそうだ。だって……その体は元々僕の物。それだけは胸を張って自分の物だと言える物だ!


 いつの間にか、僕の前には知らない奴がいた。奴……といってもいいのかもわからない。ただ白い人型をしてて、口だけははっきりと見える。いや、それだけじゃない。頭の中身と口だけははっきりと見える……そんな奴が目の前にいた。


 ここは? 僕は自分の元の姿をしてる。


「くっ……魂が、体に引かれたか……」


 そんな事を奴は言ってる。つまりここは体を支配する空間みたいなもの。確かにそうと考えれば、アンティカの中にいた時もこんな場所にいた。けど、自分の中にいた時は、こんな場所、意識したこともなかったが。


「それはそうだ……ここは生者には自覚出来ない場所なのだから」

 

 こいつ……僕の考えを……そういえば、こいつはアンティカで居る時も僕の思ってた事当ててた。


「どうして、僕の考えが分かる?」

「どうして? 貴様にも分かる筈だ。なにせ、同じ体を共有した時に、その回路は出来てるのだから」


 そういわれても困る。目の前のこいつが何を考えてるか……僕は少し集中してみる。すると何やら、画面の向こうから羽を持った人たちが覗き込んでるのが見えた。


「今のは?」


 クラッとして頭を押さえる。確かに見えたし、感じた。今のは? とか言ったが、僕はそれを理解してる。あれはこいつが生まれた瞬間だ。そこには歓喜があった。確かに僕達の間には回路なる物が既にあるようだ。意識を集中すればみえる。奴の事が。


 けどアンティカの中に居る時は無理だったのに今はどうして見えるのか。


「流石にここまで近いと獣人でも……な。はは……貴様、我をどうするつもりだ?」

「どうする? 決まってるだろう! 体を返してもらう!!」


 僕は拳を握ってそういう。


「それでどうする?」

「決まってる。ラーゼを倒し、ライザップを取りもどす!」

「不可能だな。貴様だけでは不可能だ。そしてどうやら我だけでもあの女は強大過ぎる」

「どういう事だ?」


 ちょっと見ない間に随分と殊勝になってるじゃないか。こんな奴じゃなかった筈だ。自分は神だと宣う奴だぞ? 一体何がどうしてこうなった?


「貴様は気づいてないようだな」

「何がだ?」

「あの女を殺すことはできなくなった」

「それはラーゼの事か?」


 奴は頷く。殺す事が出来なくなった? 殺す事が出来ないではなくなくなった? 確かにあいつを殺すのはとても骨が折れるだろうとは思ってたが……できなくなった?


「あの女は世界の理を書き換えた。どんな攻撃も暗殺も、そして呪いも奴という美少女とその目にかなった美少女とやらには通用しない。世界の理が守るからだ」

「なんだ……それ?」


 話が突飛すぎてついていけない。確かにラーゼは滅茶苦茶な奴だとは思ってた。だが……いや、そんなのって……そもそも世界の理ってなんだ? それを意識した時、自分の体のこの場所に、ある物がみえた。さっきまでは見えなかったし感じれなかった。けど今はわかる。


 それが何かはわからない。けど、無数の鎖で巻かれたソレは心臓の様に脈打ち、僅かな光を零してる。


「見えるか? それも理だ。世界の理の一つ。獣人への呪い」


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