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Δ116

(くっ――)


 何だこいつは!? 僕はそんな驚愕に目を見張ってる。赤いアンティカ……その動きが自分の常識の範囲外だからだ。こっちは縦横無尽の全方位攻撃をあの赤いアンティカは避けている。そんな事が可能なのか? と疑いたくなるが……目の前で起こってる事が真実だ。


 こっちは自分の体と同じように操ってる。なにせ自分自身がアンティカとなってるんだから。それは別段いい事でもないが、元の操縦方法よりも自分は何の違和感も今はなくこの体を操れてる思う。


(もしかして……あのアンティカも同じなのか?)


 そう思わざる得ない動きだ。だって僕はこれの本来の操縦方法であんな動きが出来るとは到底思えない。いや一回も本来の方法でやってないからなんとも言えないが……自分自身の体の様に動かすのよりも優れてる筈なんてないだろう。


 だが……目の前の赤いアンティカは視界外にある筈のユニットにも反応してその剣を届かせてる。いや、本来なら届く位置じゃない。ちゃんと僕は奴の武器の長さも計算に入れて七機のユニットを動かしてた。そもそも遠距離から攻撃出来るんだから、こっちが圧倒的に有利だ。


 わざわざ近くによる必要なんてない。なのに……だ。なのに、こっちのユニットが既に五つに減らされてる。化け物か? 人種の反応速度とは思えない。身体能力も反射神経も獣人の方が上だ。そしてその獣人である僕が操ってる筈のユニット以上の反応速度であの赤いアンティカは動いてる。


 普通に操縦してるなんて思えないのも当然だ。まるで消えているかのように見える動き。なるべく距離を取りつつ追いつめてはいるが……ラーゼが気になる。あいつは何かをやってる。スナフスキンが倒れた今、奴の標的はこちらになったはずだ。


 奴を止めたい思いはある。ユニットを一機向ければ……いや、奴の守りは頑丈だ。それに一番の謎はあいつ自身といえる。下手な事をやって失敗すればこっちが危ない。事実、こちらは赤いアンティカでいっぱいいっぱいだ。


 自分自身はあまり動いてないが、頭は滅茶苦茶動かしているんだ。


(もうすぐ、もうすぐだ)


 もうすぐ趨勢が決する。確かにあの赤いアンティカは驚異的だ。だが、あれを自分が受け持ってるから全体的にはこちらが優勢。そして僕も余裕がない訳じゃない。こちらの攻撃は奴に届くが、向こうの攻撃は届かないだ。


 いや、向こうの攻撃も届くはずだが、それをさせてない。それをさせない様にして追いつめてる。このアンティカは色々と勝手に分析してくれる。もうすぐあの赤いアンティカの全ては暴かれる。そうなれば、終わりだ。


 焦る必要はない。確実に行こう。


(なるほど、アレが消える様に見えるのはそういうカラクリか)


 ハステーラ・ぺラス……それをアンティカは暴きだした。あれを使うのは鉄血種らしいが……人種ではないのなら、あの反応速度も納得だ。種としては獣人よりもかなりの上位。だが負ける気はない。僕は背中の残ったユニットの収まってた機械を取って少し狙いを外して投げる。


 次の瞬間、そこに現れる赤いアンティカ。ぎりぎりで腕一本で済ましたが、武器は落ちた。終わりだ。ラーゼの戦力に慈悲はない。五つのユニットが赤いアンティカを数メートルの距離を開けて囲む。集う光が発射されるその寸前……ティルの声が聞こえた。


(ごめんなさい。剥がされる!)


 撃たれなかった光。重くなる体。装備は居空間に消え、王者の様に立ってた空から、僕は落ちていた。


(何が?)


 訳がわからない。でも理解は出来た。伸ばした腕は骨だけのみすぼらしいものだった。どうやら僕たちは時間切れみたいだ。

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