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Δ115

 一触即発の空気。誰が……いや、どちらの陣営が水中から現れたあの箱に行くかが僕たちは睨み合ってる。一応はついさっきまで共闘してた間柄だ。だからか、こちらもなかなかに動きづらい。一足飛びにあの箱を目指してもいい。いいんだが……鋭い視線でこちらを射抜く視線がある。


 それはあのスナフスキンの上半身を一発で削り取った奴。同じ獣人。まさかあの方以外にあんな獣人がいるなんて……調べたところによると、彼はなんの変哲もないパン屋の息子だったとか。そんな奴があれだけの力を……悔しいがラーゼの奴には見る目がある様だ。


 そしてそんな彼と、向こうのアンティカがこちらを警戒してる。妨害されても行ける自信はある。今のこの装備なら、全てを置き去りに出来る。その自信がある。けどどちらもまだ動いてはない。それは多分後ろめたさとかがあるからだろう。


 強敵に対して同じように挑んだんだ。まあ連携とかをやってた訳じゃないし、協力してた……とはお世辞にも言えないかもしれない。けどあの時は敵ではなかった。だからこそ、何かが引っかかって互いに先に仕掛ける事が出来ない。


 流石に情が移ったとかはないはずだ。それほどに優しい連中ばかりではない。けど皆思う所はあって、そして誇りもある。だからこそ、先に手を出すってのは関係を完全に瓦解させる行為となる。皆が欲しいのは大義名分とかだろう。


 それなら、真っ先に動かないといけないのは僕や、姫、そしてセーファだろう。そんな事を考えてると、アンティカが何かを訴えてくる。


(なんだ? ラーゼの後ろに何かがいる?)


 視界には大きく映るラーゼとそして薄いが背の高い大きな女性が見えた。そして奴らは……確実に何かをやってる。


(しまった!)


 僕はラーゼという存在の危険性を知ってた。知ってる筈だ。奴は勝利にどん欲だ。そして戦士の矜持なんて持ち合わせてはない。奴は既に僕たちを敵と認識してる。いや、ずっとそうなんだろう。スナフスキンを倒すために一時的に共闘したが味方になった訳じゃない。


 そう……ぼくたちは敵だ! 僕にとっての最大の敵……それは空の星の奴らでも魔王でもなく、最初から奴だ。なのにまた見た目で油断した。


(行く!!)


 そう決めたらもう迷いなんかなかった。分離してたユニットを操り、進行上の「敵」へ向かわせる。それと同時にブーストした。


 それがきっかけだった。今度はオウラムとラーゼの軍の衝突。個の力ならこちらだ。実際、動き出したこちら側を奴らは抑えきる事ができてない。だがその時、アンティカが警告を発するアラームが響く。僕はとっさにこの巨体を強引に動かす。


 そこに細い剣が振り下ろされる。いつの間にか黒いマントを翻した赤いアンティカがそこにはいた。

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