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Δ106

 抱きしめといてなんだが……あらためてみると僕達は互いに裸だった。まあそれぞれ魂だけみたいな存在だ。だから服なんて着てないのは仕方ない。仕方ないが……ティルはちょっと堂々とし過ぎじゃないだろうか? 


 こっちがちょっと恥ずかしい。だからといって女性が堂々としてるのに、男がモジモジとしてるわけにもいかない。こんな事態で、いやらしい事を考えてる場合ではない。場合ではないが……外そうとする視線が何度も何度も戻ってくる。


 意思では見ない様に……見ない様に……とおもってるんだが、如何せん視線が外せない。


「ラジエル様?」

「す、すまない! だが……」


 しどろもどろにそういうと今度はティルから抱きしめてくれた。その体はついさっきよりも熱い。そして、小さく呟く声が聞こえた。


「いいですよ……でも、忘れないでください」

「ティル?」


 その声はどこか寂しそうで、僕ははっとした。そうだ……この力は……そう易々とつかって良い物じゃない。


「ティル……戻れるんだよな?」


 僕のその言葉にティルは頭を上げさせてくれない。僕の顔は彼女の以外にある胸に包まれてる。ほよよんだ。ほよよんという感触が伝わってる。ありがたいが……実際、 僕は不安だった。なぜならティルの体が光ってたからだ。そして僅かだが透過しだしてる。


 彼女はここからも消えようとしてる。


「大丈夫。きっと大丈夫ですから」


 そういって彼女は僕の頭を優しくなでてくれる。こうしてくれるのはティル以外にいない。いつも国の代表と気を張ってる僕の唯一の安らげる場所。それがティルだ。ティルがいなくなったら、僕はきっと潰れてしまうだろう。


 ラーゼを倒す……ライザップを取り戻す……そんな夢はきっと絶たれる。それが自然とわかる。僕には彼女が必要だ。


「私、信じてます。皆さんなら、きっとアレを倒せると。それに戻れるのか……という質問は、こっちも同じですよ」


 そういってクスクスという声が聞こえる。確かにそれもそうだ。ティルだってびっくりしてるだろう。だって今の僕はアンティカだ。離れて、そしてようやく合流できたと思ったら、アンティカだ。これで戸惑わない奴はいないだろう。


 けど、触れ合ったティルから不安は感じない。それは信じてくれてるからだろう。なら僕だけが不安がっててどうする。


「そうだな。ティル、後は全部任せておけ」


 僕は不安を載せない様にしてそういった。強くなるティルの光……ふと、彼女のぬくもりが消えた。彼女は光になってた。


「ティル!!」

「ラジエル様、受け取ってください」


 そんな言葉と共に、彼女の光が僕の中に入ってくる。その瞬間、体の内から力が湧いてくる。これは彼女の魂だ。目を閉じれは、ティルの温かさを感じる。無駄になんてできない。それはきっと他の皆も同じはずだ。


 視界に何やら文字が流れて行ってる。僕というアンティカに何やら変化が起きようとしてた。

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