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Δ96

 最初からそうしろよ……という声が聞こえなくもない気がするが、魔眼を気合入れて使うにはやっぱり疲れるのだ。私は魔眼のオン・オフが出来ない。だからこうやって特殊なメガネを掛けてる訳で……そして魔眼は魔眼というだけあって使ってれば魔力を消費する。


 そして人種は相対的に多種族よりもマナが少ない。これで魔眼なんて持ってたら燃費が悪いのなんのって……それで私は昔はとても体力がなかった。というか直ぐに体調を崩して倒れてた原因が魔眼による体内の魔力消費によるマナ切れなのである。


 なので私は省エネを心掛けて生きる様になった。オンオフ出来ないのだから選択肢としては魔力を増やすか、なるべく魔眼以外にエネルギーを使わないか……しかない。そして私が選んだのが省エネだったのだ。そもそも魔眼持ちの私なんかとお友達になってくれるような同世代の貴族の子女なんていなくて、更には実家でも不気味がられてたから、必然的にポジティブな思考になんてなりはしない。


 ただ誰にも迷惑を掛けない様にと考えると省エネ思考になるのは仕方ないと思うんだ。けどどうやらこの魔眼のおかげで私の魔力は普通の人よりは大きくなってるらしい。生まれた時から、魔力切れと回復を繰り返してきたことにより、体を鍛える事と同様的な現象が起きてたのではないかといわれた。


 つまりは筋肉をつける為に、筋肉を傷つけて回復させるとより強い筋肉になるように、魔力もそうであるらしい。まあ勿論、メルさんが言うには種にはマナを受け入れらる容量に限界があり、それ以上はどう頑張っても魂的にマナが増えることはないらしいけど……マナは魔力とほぼ同じ物だから、マナ=魔力の限界値だ。


 そして人種はやっぱりその容量の限界値が最低値。私の魔力の大きさなんて、世界で見たら弱小である。そんな魔力で使える魔眼はある意味最高率なのかもしれないが、それでもやっぱり私には負担で、魔眼に魔力を持ってかれてる私は、魔眼以外の力はほぼない。


 そうこれが人種の限界なのだ。人に過ぎた力を与えられれても、それに振り回されるしか出来ないのか人種だ。


(なにか……なにかない?)


 私は魔眼で『何か』を探す。その何かはこの魔眼でしか見つけれらないような歪みだ。違和感と言ってもいい。通常の状態では何も見つける事は出来なかった。けど今は全力全開。時間と共に汗が吹き出し、体が気怠くなってく。


 視界が赤く染まってくのは魔眼が赤く発光してるからだとここ数年で知った。だって全力なんて使った事なかったからね。疲れるのに省エネをしてる私が積極的にこんな事する訳ない。けどラーゼやキララと知り合って、付き合う事が多くなると、あの二人は大体トラブルメーカーだから荒事がやってくる。


 そうなると自分の全力を知っておくことが必要になったから、色々と沢山の人に協力して貰って私はこの魔眼と向き合った。けど私にはついにこの魔眼の真の役割を知る事は出来なかった。魔眼と言ってもどうやら色々とあるらしいのだ。


 見ただけで相手を石化させたり、未来を見たり、事象を曲げたりとか……魔眼というのはそれだけ凄い物の筈なのだ。


(やっぱり……上位の相手には私の魔眼なんて……)


 そんな考えが浮かぶ。なんとなくだが、相手がとても強い力を持ってるのは分かるのだ。それこそ魔眼があるから。


 完璧な空間だ。綻びもゆがみもない。そもそもが展開してる陣が全くの意味不明。陣はクルクル回る細長くうねったものだった。それが四つ空間の端にある。気合を入れてようやく見つけれられたのがこれだけ……でもこれは得体のしれないマナを放ってる。


「これを……壊せれば……」


 ここから出れる。けど、見た事もない陣。それにこういう設置型にはトラップがあったりしそうだ。それすらも魔眼なら見破れる筈だが……この陣は見たことないタイプ。はっきり言って何が意味を持ってるかすらわからない。


 これで罠を見破れと言うのは魔眼でも無理だろう。けどここから出るにはやるかしかない。私は試しに魔法を放ってみる。けどやはり防御機構もあるみたいで壁に阻まれるようにして魔法は消えた。こうやって魔眼を使ってると強い魔法何て撃てないし、そもそも人種の魔法程度で壊せる物か疑問だ。


 人種の魔法は脆弱だ。体だって脆い。


「私が……今できる……唯一の事……」


 私には何もない。この目以外何も。この目が私の価値だ。キララ達はそんな事ないと言ってくれるかもだけど、私はこれが私の価値だと思ってる。だから最後はこれに賭けてみてもいい。私は全ての魔力を目へと集める。


 その時頭に激痛が走った。崩れる膝。視界がぼやける。目の負荷に脳が耐えられないのかもしれない。私は手で左目を隠した。両目を使う事が人種には無理なら、せめて片目だけでも……これならどうだ!! 


 私の視界は真っ赤に染まる。頭では――壊れろ――と唱えてた。目の前の陣が何層にも分解されて見えて、意味が私の知ってる陣と比較されて解析されてく。頭の痛みは激しさを増していき、何やらいろんな所から垂れてるのが分かる。


 けど、意地で見続ける。赤かった視界も次第に四隅から暗くなってく。


「こわれ……て……」


 私は最後にそう呟いて、小さな亀裂を魔眼で陣に刻んだ。

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