Δ79
(なんちゃらかんちゃらフィールドが展開されてる? なんだそれ!?)
なんちゃらかんちゃらはとても難しい言葉が使われてた。はっきり言って理解がおいつかない。この体は便利な物で、難しい言葉もなんと検索できる。多分、このアンティカの中に沢山の知識が詰め込まれてるのだろう。
それで出てきたなんちゃらかんちゃらの言葉の詳細は……ますます訳が分からなくなるものだった。だからもう面倒だからなんか凄い防御機構が展開されてると考えてくれるといい。きっとあのセーファが戦ってる奴が張ってるのと同種の物だと思える。
(こんなの反則だろ!!)
そんな事を思ってももうどうしようもない。今の僕は裸同然の状態だ。装甲をパージしてるからな。普段の姿に例えるなら、全裸。服を脱ぎ捨てた状態なんだ。そして希望を託した武器はさっき逝った。この状態でどうやってこの銀のアンティカの攻撃を防げるというのか。
あわよくばどこかを犠牲にして……とかおもうんだが、どこかを欠損すると、著しく機動力が落ちるという警告がご丁寧に出る。だからそうなると、逆転なんて目はなくなる。かといって無傷でこの瞬間を潜り抜ける術なんてない。
(何か――ないのか!?)
頭の中にアンティカの情報が流れる。けどアンティカというのはやはりダンプとかの機械なんだと思い知る。基本のフレームだけではいかにスムーズに動けるとか、馬力が従来比どうとかしかない。多分フレームをとっても、この今の僕自身よりも銀と黒のアンティカのフレームの方が世代的にも優秀なんだろう。
だけどそれもあくまで基本の運動性の差しかフレームにはないとみる。つまり、奴らをここまで強くしてるのは外部装甲。それによってアンティカという兵器は、幾重もの戦場に適応出来る汎用力の高さを持ってると考える。
(まあつまりはこのままじゃ、ほんと終わりって事だよ!)
基礎性能しか今の僕にはつまりはない。時間をずらしての二機の剣線は最初の攻撃を避けたとしても続く攻撃に斬られる未来しかみえない。そしてよしんば……二つの剣線を避けれたとしても、奴らには中・遠距離さえもカバーできる攻撃手段がある。
詰みです。それしか結論がでない。けど不思議な事にアンティカが見せてくる確率は百パーセントではない。どこかに、生き残る術があるって事? そう思ってると、いきなり視界が廻った。地に足をついてた感覚もなくなった。
(なに……が起こった?)
そう思ってると、アンティカがこの現況を教えてくれる。それは散ってた兵士達だった。どうやら、戻って来てくれたみたいだ。仲間が居るから、さっきの確実と思えた死も確定ではなかったのか。けどあれは自分ではどうすることもできなかった。
(いや、いつもそうか)
僕はいつだって一人では何も出来ない。出来た試しがない。優秀だと思ってた。同世代よりは実際運動も勉強も出来てた。でもそれは作られた枠組みの中でしかなかったんだ。
(でも、僕はもう受け入れた)
助けられることの何が悪い。悪は何も出来ない事じゃない。何もしないことだ。支えてくれる皆がいる。僕はその大切さを知った。この渦巻く風の中でも銀のアンティカの二機は平然としてる。どうやら吹き飛ばされたのは僕だけの様だ。
装甲分、奴らは重いから耐えれるのだろう。すると奴らはその剣を輝かせて、無造作に剣を振るう。剣先から放たれる衝撃波。それがこの風の渦を霧散させる。そして一機はこちらをもう一機は間に合った増援に首を向ける。
実際、二機を相手取るのは厳しい。増援が一機を担当してくれるとありがたいが、荷が重いか? この白銀は明らかに性能が違う。それはあの漆黒もそうだが……あれを相手してるのはセーファだ。どうにかなるだろう。
(受け入れた……けど、なにも出来ない奴のままで居続ける気はないんだ!!)
僕は気持ちを切り替える。あの白銀にビビッて、今まではどう回避するかとかしか考えてなかった。実際それが一番なのはわかってる。今の状態では奴らとはさがあり過ぎるんだ。現実的には、増援に二機を請け負ってもらって、その間に僕は落ちてるアンティカから装甲を貰って再び参戦するってのが理想的だろう。
けど、その場合きっと少なくない被害がでる。兵士なんだから死ぬことも仕事だろうが……僕は一度全てを失った。だからか、誰ももう失いたくないと思う。これは我儘だ。だけど、そういう僕だから上に立ってほしいと言われた。
視界に、僕の考えを読み取ったアンティカからの攻撃が通る確率が出る。三パーセントしかない。けど逆に三パーセントある。
僕は体を調整して、足から床につく、その時、上手くその勢いを全身で逃がし、曲げた膝に力をためて白銀の一機に向けて突貫した。その握った拳は、白銀の二メートルくらいの位置で止まる。このなんちゃらかんちゃらフィールドが攻撃を邪魔してる。
これを突破するのは今の僕には無理。だけど、三パーセントの確率がある。その三パーセントは何なのか考えた。それは僕がフレームだけになってる中で、唯一ある外部装置。それは……
(王の剣よ僕のマナを感じろおおおおおおおお!!)
僕は魂を震わせる。王の剣ならわかるはずだ。今のこの機械こそが僕だと。そしてどんな姿形になっても、王の剣に認められる魂は一つ。回廊は今もちゃんと繋がってる!!
(うおおおおおおおおおおお!!)
アンティカの瞳が赤く輝く。次の瞬間、僕の拳は白銀に届いた。




