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Δ73

(ぐっ……がっ!? 痛く……ない?)


 どうやらこの体に痛覚という概念はないようだ。けど確実にダメージはある。彼らも学習して、装甲がない個所を狙ってる。まだ大丈夫だが、内部が壊れたらどうなるのだろうか? ドックとかに入らないと直らないのだろうか? アンティカも機械みたいだし、ダンプとかと同じような感じなのか……


「まだ動いてるぞ!」

「隊長! ラジエル様の援護に向かった方がよろしいのでは? そのアンティカは既に脅威になりえません」

「そうしたいが、まだまだアンティカは居る」

「ではそちらを片付けましょう!」

「そうだな」


 どうやら彼らは僕に戦闘能力は既にないと判断してくれたらしい。部下に殺されなくて済んだのはいいが、戦場で敵を放置するのはどうかと思う。捨て置いた敵に足元を掬われるなんてのはよくある事だ。だが今は喜ぼう。矢印が示す場所は既に見えてる。そこには彼らが堕としたアンティカが見えた。さっきの攻撃でかなり動きづらくなってしまったが、それでも不快な音を響かせながらもなんとか動く事が出来た。これが生身なら、もう死んでるかもしれないのかも。


 機械の体だからこそ、無理を押し通せる。


(早く……体を取り戻さないと)


 けどいつまでもこんな体に閉じこもってる訳にはいかない。僕の体はあくまであの獣人の体だ。決してこれではない。奪われた物は取り返す。それは獣人の矜持。



(これをどうすれば……)


 そう思ってると、視界に修復回路を展開しますか? の文字が見えた。とりあえずそれを意思で選択する。すると、僕とその壊れたアンティカを囲む様に魔法陣が現れる。そして視界には沢山の文字が流れてく。


『利用可能なパーツを検索』『エネルギー供給回路を構築』『換装の為、空間座標の固定を実地』


 光が収まると、何がどう変わったのか、よくわからない壊れたアンティカがそのままあった。視界には『修復率、六十四パーセント』の文字。どうやらこいつだけでは完璧ではなかったようだ。けど……


(きっきよりは動かしやすい)


 意思がきちんと指先まで届く感覚がある。ちゃんと腕を通して掌通って人差し指とか、意識しないとそこまで細かく動かないが、阻害される感じは格段に低まった。どうやらいいパーツが手に入ったようだ。


(これなら……立てるかも)


 そう思って僕は頑張って体を起き上がらせようとする。普段どういう風に立ってたかを思い出しながら、各所に意識を送ってく。そしてついにぎこちなくはあるが立てた。けど……どうやらそれが不味かった。



「隊長! アレを!!」

「ちい! まさか自分達で直せるのか!? やむを得ん、二人いってアレに止めをさせ! 今ならまだ簡単に壊せる筈だ!!」

「はい!」


 そんな声が聞こえた。立てたといっても素早く走るとかまだできそうもない。だが、彼らは渾身の魔法を込めて迫ってる。だからって反撃なんて事も出来ない。どうしたら……上では僕の体とセーファが戦ってる。


(こうなったらいっそ!)


 歩く事も走る事もままならない。けど、その場から飛び上がるくらいはきっと出来る。アンティカなら、あそこまで届け!! 僕はそんな思いを込めて膝を曲げ力をためて地面を蹴った。視界に何か赤い文字が走ってたがしらん。悠長な事なんて言ってられないんだ!!

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