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Δ69

「やはり凄まじいな」


 僕は……いや僕たちは建物の壁面に張り付いて戦いを見てる。流石に気づいてない……ということはないとおもうが、飛べない我らの優先度はそんなに高くはないのか、直接的な攻撃がアンティカ共から来ることはない。だが壁に張り付いてるだけだから、戦闘の振動やら、風圧やらで落ちそうになくこともしばしば。だが見てる分には危なっかしいだろうが、僕たちはそんな事は思ってない。流石にそのくらいで落ちる程の無能ではない。僕たちは狙ってる、その瞬間を。


 炎をその身にまとったセーファは迫る攻撃を燃やし尽くして、一直線に近づいてアンティカの懐に潜り込む。そして奴はその細腕で鋼鉄の巨人の体を破壊してる。同じように飛べる兵たちも自身の武器とかを使って攻めてるのになかなか傷つけられずに苦戦してるというのに……これが種の差だろう。


「うはははははははははははははは!!」


 そんな声を出して笑ってるのは勿論セーファだ。かなり楽しそうだ。だからってあいつも余裕たっぷりといういうわけじゃない。数は向こうが多いし、どうやらアンティカ共は学習してる。最初は近づいたセーファに丸焼けにされてたが、それも最初の数体だ。何故にセーファが自身の自慢の炎を使わずに今はその腕力に頼ってるのか……それは既にアンティカにはその炎が通じなくなってしまったからだ。奴らの対応は早かった。何かの術式を起動してきたと思ったら、炎の通りが極端に悪くなったんだ。


 それでもセーファの炎は特別性だから完全に防げてはいないんだが、元々が燃えやすい材質でもない奴らには動くのに支障ない炎など、あってないよう物のようだ。だからそれを知ってセーファも奴らに対して炎を使わなくなった。精々目くらまし程度で使う程度だ。そしてそれはセーファの攻撃だけじゃない。


「また……か」

「ラジエル様、あれはやはり……」


 一緒に壁でタイミングをうかがってる兵がそういう。我らオウラムは多種族国家だ。勿論兵士も混成部隊。数々の種の個性を詰め込んでる。種にはそれぞれの強みがある。それを組み合わせれば対処できないことなどない。……そんな考えが我らオウラムにはある。そしてそれは実際に証明されてきた。それぞれの強みを生かし、弱い所を補いあう。あまり慣れあわない種達だが、切羽詰まって塊あうと意外な反応を見せたんだ。僕たちはただ逃げてそして弱い者たちが集まっただけではない。


 そう証明できた。だが……目の前のこのアンティカ共はどうやら、全ての種に対しての対策を持ってるようだ。それぞれの種の強みが……とことん無効化されていってる。セーファの炎に、魔眼を持つ種にはその効果を打ち消す術式を自身に埋め込んでる様だ。風を操るのに長けてる種には術式いくつも組み合わせた強力な物を使った風の主導権を渡さないようにしてる。他にも色々と違う力を持つ攻撃を行ってるが、効くのは最初の一回二回だけ。


 それ以降はどうしようもなくなってる。このままでは明らかにまずい。奴らの学習能力――なのかその対応の早さが尋常じゃない。まるで……すべての種の情報を予めもってるような……


「いや、持ってるのか……」


 そう考えてその考えが間違いでないと気づく。多分、奴らの中には全ての種に対する対応策が予め用意されてる。だからこそ、あれだけの速さで対応できるんだ。そうでないと説明できない。


「恐ろしいな」


 こんなのがあの女の手に渡ったら……それそこ世界がひっくり返りかねない。


「セーファ!」

「仕方ない、一体そっちに飛ばすぞ!!」


 そういってセーファが一体のアンティカをこちらに投げる。僕と何人かが飛び、そのアンティカに取り付く。そして必死にコックピットをこじ開ける。僕は獣人だ。力には自信がある。だか流石にアンティカは人種の国では最高機密。動かし方とかまでわかるはずもなかった。だから仕方ない。僕は懐から一枚の葉を取り出す。それは白い葉だ。


「姫、よろしいですか?」

『うむ、我は全てを知っておる。しょうがない探ってやろう』


 一枚の白い葉は形を変え、小さな人型になったら内部に入ってその姿を消した。異変を感じ取ったのか、いくつかのアンティカが来るが、建物に残ってた兵達を飛び降りて他のアンティカに取り付いて妨害してくれてる。だがそうはもたない。そう思ってると、いつの間にか姫は戻ってた。


『ふむ……これはなかなかにきついがやるか?』

「それしか方法はありません!」

『うむ、こちらとて忙しいしな。ティルをいつまでも放置してはおれん。あの娘も生き急いでおるからの』

「頼みます」


 そういって今度は姫がその体を僕の体に溶かす。それと同時に視界が揺らぎ、頭が唸る。激しく激しく……だが負けない! 僕は揺らぐ視界の中、アンティカの操縦桿を握った。

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