Δ59
「うむ、くるしゅうない」
なんか平伏されると無性に言いたくなるよね。私の言葉を受けて私に殺されたと思ってる奴が動きだそうとしたけど、それを抑えて髭が立派なオジサンが口を開く。
「ありがとうございます。子奴の比例は我らの命で贖います。我らの運命を代償に……」
「それが代償になるとでも?」
何? 私は運命を食べる化け物か何かかな? てかこいつらなんでこんなに私に平伏してるのか……全然わからないんですけど!? とりあえず余裕あるように見せてるけど……私は実際かなり動揺してるよ。こいつ等から何か情報は得られるだろうか? なんか知ってそうだよね。
「確かに我らの運命は既に決してますか。ですが必要ではありませんか? 自身を知る為に」
「私は既に自分が宇宙一の美少女って知ってるけど?」
「くはっ」
私に襲い掛かってきた奴が抑えきれないと言わんばかりにそう笑った。なんかイラっと来るね。だから言ってやる。
「あんた達は一応そこの哀れな奴と違って肉体あるんじゃない? 私見たけど?」
「づっ……」
ふふ、笑われるよりはそういう顔で見られる方がいいよ。
「それを貴女もあの方も許されますかな?」
立派な髭のオジサンは意味深にそういうよ。ふむ……実際わたしが許すか許さないかとかなんか関係あるの? とか思う。だってこいつらの事なんかどうでもいいよ? 心底ね。
「確かに我らの体は繭の中にあります。ですが肉体など我らは既に必要としてないのですよ」
「そうなの?」
「肉体はマナに縛られます。それは世界に縛られることと同義。今の私達はこの世界と違うマナとなり、色々な物を超えておるのですよ」
ううむ……なにやら皆頷いてるけど、私的にはよくわからない。つまりは既に肉体など必要ないと? けどそこに死んで霊体となった奴が口を挟む。
「それで本当にいいのか? 我らという種はここで終わってしまう」
「何度も話し合った事ではないか。我らは既に種という概念を超越したのだ」
「だが……俺は……」
何やらあいつは納得出来てないみたいだね。私はちょっと集中してマナを観察してみる。ふむ……なるほど。
「あんたはどうやらこの世界のマナに囚われるんだね。だからあんたは他の奴らと違って超越者じゃないと」
だから他の羽付きの人達と違って現状に満足なんかしてない。
「我らのこれは副次的な事だったのです。長い眠りにつき、その過程でマナは変質に我らはこのような存在に。ですがそれを成しえたのはここに居る者達だけなのです」
「これで全員じゃないんだ?」
「半数もいませんよ」
なるほどね。奇跡はそう簡単には起こらないと。当然か。
「ってそれじゃ、あんた達の総意って訳じゃないじゃん」
「それは問題ありません。なぜなら、他の者達は世界へと還ってますので」
「あっ、そうなんだ」
どうやら他の奴らは既に死んでるらしい。それならここに居る奴らが総意か。
「だから! ニーナの体を俺に! 彼女ならきっと受け入れてくれる!!」
ニーナというのはこいつが潰れた時に泣いてた人かな? そしてその人はここにはいない……つまり死んでる。だから恋人の――かは知らないけど、体で復活しようとしてるのかな? 変態だね。
「それは許されん。わかってる筈じゃ、我らの肉体は既にゼルラグドール様に……そして降臨なされたメデス様のより完全な昇華の為の贄だと」
その言葉を聞いてもう一度私を睨んでくる死んでる奴。いやいや、だから知らんがな。てかそうメデス。それってやっぱ私ですか? みたいだよね絶対!




