Δ52
割れた水から下へと行く。光ってるとは言え、下の方は暗い。マナが下まで届いてないのかな? 深海とはこういう所なのかな? なんとか思ったり。まあ深海というか、空の上の筈なんだけどね。一体どうなってるのか。魔法があれば何でもありだよほんと。だから深くは気にしない。
『おお……これは……』
「どうしたの博士?」
『周りをみてみるのじゃ』
「周り?」
暗いから見えないけど……とか思ったけど、この籠には暗視機能もあったね。切り替えてみると、なるほど――ネジマキ博士が唸る理由がわかった。
「これって……アンティカ?」
確かにアンティカのフレーム部分だけはこんな感じだった。今の三機のアンティカは骨組みに装甲をくっつけて立派に見せてるのだ。その装甲部分は今の時代の技術。けど、フレーム部分は古代の技術。つまりはここの技術な訳で……今、この場にはフレームだけのアンティカが大量に沈んでるのが見えた。
「壊れてる……の?」
装甲のないアンティカはとてもガリッガリに見える。だから異常に見えるんだよね。装甲付きのアンティカばっかり見てるからね。
『いや、あれは壊れてはおらぬよ。儂には今にも動き出しそうに見える程じゃ』
「やめてよね。そんなの洒落にならないわ」
本当だよ。これだけのアンティカが動きだすとか悪夢じゃん。でも悪い事って大抵当たったりするよね。きっとこいつらもその内動き出すんだよ。絶対そう。だっておあつらえ向きに用意してあるんだよ? 動かない訳ないじゃん。
『止まった? ってきゃあああああ!?』
キララの無様な悲鳴が聞こえる。今、キララはアナハとティアラと共に別の籠に乗ってる。起きないティアラが心配の様だ。キララの魔法でも起きなかったからね。よくわからない事をされた訳だし、それもしょうがないとは思う。時間がたてば自然と目覚めてくれるのか……そうじゃないのか……ここに来たのは私の責任だし、少しだけ責任感じる。キスとかしたら目覚めさないかな? とか思ってるんだけどね。けど本気で心配してるキララにそんな事流石に言えない。
ふざけてるとか思われそうじゃん。本気なんだけどね。勿論私がキスしてあげるのに。いや、ティアラの場合はキララの方がいいのか? でも私宇宙一だしな……とか余計な事に思考を逸らしてると、私もそれを見て一瞬目をむいた。
(危ない危ない。私もキララみたいに悲鳴上げる所だったよ。淑女としてもっと凛としてなきゃね)
そう言い聞かせつつ、私は冷静に目の前のそれをみる。いつの間にかアンティカは降下を止めてる。つまりはここが目的地。そこには別に新たに続く扉とかがある……とかじゃない。ただゼロの剥く方向には顔があるだけ。アンティカの装甲を外したフレーム部分の顔。だけど、それは超巨大だった。そして何故か目玉がとても……生々しい。絶対に生きてるよ……てきなそれだ。
「デカい……これってアンティカなの? 眼とか生きてるよね?」
『信じられん……こんな……』
通信越しに聞こえるネジマキ博士も驚天動地の様だ。あの柱の陣が起動したからこいつも起動したんだろうか?
「うわ!?」
「不味いぞ!!」
そんな声が籠の外で聞こえる。何かと思えば、それはデカい手だった。きっとこの目の前の奴の手。それが左右から水の中から突如として現れた。狭い空間に密集してた私達。とても避けれるような代物じゃない。いや、小回りが利く単体の飛行ユニットに乗ってる奴らならなんとか交わせるかもだけど……あんまり自由に飛べないこんな場所じゃ……とりあえず私達は籠の結界を全力展開する。それしかできなかった。視界は一気に暗闇に覆われる。
巨大アンティカの両の手が私達を満遍なく包み込んだんだ。




