Δ46
「素早く成さねば……な」
我はそういって何隊かをペルの方へと行かせる。ペルは強いが、何分小さい。流石に島を壊すとなるとあの体は不利だ。まあこちらも楽ではないが……飛行ユニットに乗り島近づきつつ、これをどうやって壊すかを思案する。まあ試案すると言っても、俺にはパワーしかない。なのでやることは単純だ。ぶっ壊れまで斧を振り下ろす――それだけだ。だがどこを狙えば素早く壊せるかは考える必要がある。なぜならラーゼ様はただの脳筋が嫌いだからだ。
「なに!?」
そんな事を思案してると、一番低い位置にあった島が内部から崩壊した。激しい音を立てて崩れ去る島は湖に大きな飛沫をたてる。あのサイズでなんて奴。崩れ去った島の中央にはペルがその体を伸ばして佇んてた。凄い力を感じる。なんという行動の速さ。こちらも負けたままではいられない。手にした斧に魔力を通す。青く光りだす斧は同時に音を立てるように振動する。そしてその大きさを変えていく。内側から壊せれば確かにそれが良いのかもしれないが、あいにくそういう器用な真似は我にはできない。
だから力だ。狙いは島にあった唯一の建物……というにはあまりにも簡素な石畳。だが中央には何やら丸い石がはめられてる。アレが怪しいと我の直感が言っている。
「離れていろ!!」
率いてきた部隊を散開させて我は巨大になった斧を振り下ろす。だが振り下ろした斧はみえない壁に阻まれる。ペルの方ではこんな障壁は見えなかった。だがこういう防御機構は想定内。どうしてペルがなんの抵抗もなく壊せたのかの方が謎だ。
「うぬぬおおおおおおおおお!!」
我は更に力を込める。この程度の障壁……今の……俺なら――
「おおおおおおおおおおおおお!!」
障壁を打ち砕き、島を抉る斧。その衝撃で島が一気に湖に落ちる。
「しまった!」
湖の近くにいた、ラーゼ様がこれではビショビショに……ビショビショに……想像するとナニがヤバい。いや、今はそれどころではない。とりあえず今はラーゼ様の所にいって謝っても怒られるだけだろう。なので今は与えられた役目を全うするだけ。
「あと一つ!」
一番高い島には国軍が向かったはずだが、落ちてくる様子はない。発砲音は絶え間なく響いてる。それに魔剣の光も――だかそれでも島はおちない。国軍はプライドが高いから嫌がるだろうが、そんな場合ではない。ティアラ様を助ける為にも素早く役目を果たさないと。
「ぬ!?」
我らよりも早く島に向かう何かが見える。いや、アレは竜。水の竜が増えている!? 流石にここまでやられて大人しくしてる訳はないか。竜の方が速い――しかたないからわれらは水龍へと攻撃をする。だがやはり効果はない。するとアンティカが赤いマナのシールドを広範囲に張り、水の竜を抑えた。マナでなら抑えられるという事か。
『お願い! 早く!!』
「任されよ!!」
聞こえてきた声にそう答え我らとペルは一番上の島へと同時に攻撃をする。我が下から斧斬撃で傷をつけ、そこにペルが突っ込んだ。どうやらあいつには島の防御機構が反応しないようだ。そして内部から一気に島が崩れる。最初の島と同じ。その瞬間、湖の水が光りだす。そして沢山のマナがあふれ出す。それはまるで蝶の様に舞っている。




