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45/2416

#45

 エレベーターを降りてエントランスにでる。スイート用のエレベーターは直通だから他の人が乗ってこないのがいい。私ほどの可愛さなら、密室は常に危険だからね。雄なんて狼。いつだって発情してくるのだ。まあ毎晩ベッドで蛇に抱かれてる私が言うことでもないかもだけど。けど最後まではやってないし! 舐められてるだけだから。

 思い出すだけでゾクゾクする。

 

「あー早くうさぎっ子の所にいこ」


 少し歩くと直ぐに、視線が集まってくる事に気づく。いつもの事だから気にせずにホテルの外へ。するとそこで人よりで猫耳を生やした軽薄そうな奴と、獣寄りの黒猫っポイマッチョに声を掛けられた。

 

「ねえねえお嬢ちゃん。君凄く可愛いね」

「は?」

「いや、だから凄く可愛い――いぎっ!?」


 とりあえず地面にあった軽薄そうな奴の足の甲を踏みつけてやった。人形は基本人の形してるから猫の癖につま先立ちではない。黒猫マッチョはちゃんとつま先立ちだ。だからこそ軽薄そうな方したんだけどね。足の甲って弱点らしいよ。こんな小さくて軽い私でも勢いと全体重を乗せれば、それなりの攻撃力になる。だから軽薄そうな猫耳男は痛がってる。

 

「私、自分の可愛さ知ってるから。もっと気の利いたこと言いなさいよ」

「こんのガキ!」


 猫耳男は私に向かって拳を向ける。この私を殴ろうとは死罪確定だね――

 

「いぎっ!?」

「きゃあああ!!」


 ――社会的にだけど。私は力を行き渡らせて自身を保護。その上で殴られた振りしてあげる。盛大に後ろに倒れて、声もよく通った筈。しおらしく倒れた振りして周囲のざわめきを確認する。確実にこっちを見てる。それはわかるけど、わざわざ行動に移そうとするやつは居ない? いかついのは外見だけか? 獣人の癖に美少女を助けないとは何事だよ。

 とか思ってると私はとんでもない事に気付いた。なんかすぐ傍にアレがある。そうあれあれ……

 

「あっ、ちょっとごめんあそば」


 そう言って私は近くに落ちてたうさぎ耳を取ってつけ直す。うん、こんなものかな? すると黒猫マッチョが「貴様人種か?」とかいうから慌てず驚かずに、そして少し小馬鹿にした様な笑いを出して否定する。

 

「あはは、まさか、私の耳は着脱式なだけですわよ」


 なんかさっきから口調がおかしくなってるけど、慌ててるわけではない。向こうの方が慌ててるだってツッコミ入れて来てるし。「そんなわけあるか!」って。やっばり着脱式は無茶だったか。

 

「人種か……はふ」


 なんだその変な音? 私を下卑た目で舐め回したからこの猫耳男の思ってることはわかる。人種になら何やったっていい。そんなクソッタレた事がまかり通ってるんだ。戦争してるんだし、まあわからなくもないけど、人権を主張したいところである。

 

「人種にしては相当の上玉だな。おらっ、もっとよく拝まされろ」


 なんか急に言葉遣いが荒くなったな。自分が上だと認識したようだ。これだから獣は……いや、これはどの種も一緒かな? 自分が優位だと思えば一気に攻める。それは戦略上の鉄則みたいなものだからしょうがないね。この国にいる人種なんて生体兵器か奴隷くらいだし、そんな相手に下手にはでないでしょ。私の頭を掴んで強引に顔を見る猫耳男。

 

「へえーこれは凄い。だが、むかつく目だ」


 そういって猫耳男は黒猫マッチョに視線を送る。けどどうやら黒猫マッチョは乗り気ではないよう。


「こいつアイシャンテホテルから出てきたぞ。奴隷だとしてもかなりやばい奴の所有物なんじゃないか?」


 ああ、そういうこと。確かにただの奴隷がこんなところから出てくるわけないよね。案外こっちのマッチョの方が頭使ってるじゃん。侮りがたし黒猫マッチョ。けどそんな忠告に猫耳男は聞く耳をもとうとしない。哀れなやつである。

 

「何言ってんだよ。人種なんて好きにしていい奴等だろ? 俺たちにどこも敵うところなんてない劣等種族だ。お前の爪でひっかくだけで泣きわめくぞ。こいつさっきから全く俺たちを怖がってないんだ。脅してやろうぜ。おいガキ、こいつの爪はいてえぞ!」


 なんか可愛そうな奴だねこの猫耳男。自分では威張れる所が一つも無いんだろう。わざわざ他の奴に頼って脅すとかなんなん? しかも私まだ小さな少女だよ。そんな私に自分以外の力で勝ち誇ろうとか男としてのプライドはないの? 

 

「おらおらどうした? 怖くて声も出なくなったか? 許して欲しかったらとりあえず裸にでもなれよ。てめえらみたいな人種に服なんか必要ねーんだよ!」


 そう言って私に向かってその手を伸ばしてくる猫耳男。ラフな格好だけど、こんな奴に触られるとか、それだけで着替えたくなっちゃう。だからすかさずこう言うよ。

 

「触れるなカスが。私はアンタが触れれるような女じゃないのよ。見てわかんない? アンタのその貧相な容姿に私が釣り合うとでも? 世界がひっくり返ってもありえないんですけど〰ププー!」

「この! 人種の分際で!!」


 そう言って再び拳を握る猫耳男。そして振りかぶった拳が私に当たる。けど今度は吹っ飛んでやらないよ。

 

「いっでええええええええ!!」


 そう言って転げ回る猫耳男。いい気味である。なにやら黒猫マッチョは驚いてるようだけど、手は出してこない。やっばりこっちが見込みある。向こうの雑魚オブ雑魚は殺したい所だけど、その手段が私にはない。力使うと広範囲消し飛ばす事になるからね。それじゃあ犠牲が大きすぎる。消し飛ばしてもいいけど、そんな事したら流石に蛇も私をかばえ無いだろうし。

 問答無用で死刑とか宣告されてもこまる。どうしようかと悩んでると、猫耳男は懐からナイフを取り出した。まあ別に所持は禁止されてないし、寧ろここでは推奨されてるくらい。なにせ獣人は己の強さとかを追い求める傾向が強いらしいから、幼い頃から武器の扱いは一杯叩き込まれるのだとか。聞いた話では学校の授業とかであるとか。

 流石異世界はちがうね。けど私はナイフをビビりもせずに笑っちゃったよ。

 

(よし、あれで事故を装って殺そう)


 そんな考えをしてたからだ。すると猫耳男は何やらナイフの刀身を光らせてる。体内のマナを武器に通すとああいうことが起きるんだとか。ああする事で武器の耐久力とか切れ味とかが上がるらしい。まあだけど、あんなナイフで私の防御を抜けるとは思えないからどうでもいい。あれはあの猫耳男が本気だということだろうけど、私にとってはただの棒きれとかわらないからね。


「てぇめぇぇ!! 人種の分際で! ぶっ殺してやる!!」


 ドラマとかで聞けそうな事を吐いて突っ込んでくる猫耳男。私はただそれを待つ。狙うは奴が完全に決まったと思って油断した瞬間。その瞬間にあのナイフを返して、奴にめり込ませる。そんな作戦だったんだけど……

 

「やめたまえ!!」


 そんな透き通る様な声が響いて、私の計画はおじゃんにされた。

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