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#43

「はあ……」


 ようやく蛇から開放された。全く、こっちは一仕事終えて疲れてるのに、なんであんな変態の相手をしなければいけないのか。まあ目覚めた時点で殆ど疲れなんて無いんだけど……けどほら目覚めって大事じゃん。あいつの感触は幾ら時間がたってもなれない。やっぱり蛇って事が致命的。なんか触れてる部分が細かくズリズリするんだよね。しかも直ぐに冷えるからそのズリズリで温かい冷たいが極端に襲ってくる。

 あっちは私という超絶美少女を抱けて最高かもしれない。けど、こっちは最悪だよ。ベッドの上で私は呆然としてる。さっき蛇は重要な会議があるとかで出てった。最近はほんといられる時間、いっぱいを使って私を愛でてる。

 もうハッキリ言おう。蛇の変わりようはやっぱり私の勘違いって訳じゃないみたい。元々がこんな変態なのかと付き合い短い私は思いもしたんだけど、そんな訳無いということが証明された。それは私が殺されそうになったからだ。こうやって蛇がいない隙きを狙って奴はくる。

 

「今日こそその生命を貰う」

「ほらね」

「なにが――ほらね――だ!」


 いやいやこっちの話だから気にしないでいいよ。部屋の隅の暗い所からヌッと現れたのはカメレオンみたいな奴。その特性上、周囲の色に紛れる事が出来るよう。こいつどいつの差し金かと思ったら、蛇の腹心の部下らしい。腹心の部下が尊敬する上司の変わりように心を痛めて行動に起こした。これこそ、蛇が私に狂ってる証拠だろう。

 

「貴様は危険だ。貴様は貴様は……なんで服を脱ぐ!?」

「いや、あのくそ蛇がベタベタしまくるから着替えたいじゃん。あっ、でもその前にシャワー浴びたいや」

「なんでこっちに向かってくる!!」


 全く煩いカメレオンだ。なにをそんなに動揺する事があるのか。ただ私が裸になっただけじゃん。こんなので暗殺専門の隠し腕なの? 疑問が湧くよ。真っ赤になっちゃってまあ……童貞かと言いたいね。私は処女だけど。世界で一番価値のある処女だけどね。顔を逸して腕でまで覆って、けど気になるからチラチラ覗いてる。

 どこの世界でも、どんな種族でも雄のやることなんか変わらないね。

 

「なんでってだってそっちがお風呂じゃん。それとも……」


 私はカメレオンの傍につくと、顔が逸れてる方に回って上目遣いに見つめる。そして指を唇に一つだけ置いて、こういう。

 

「一緒に入る?」

「ななななな……何を言ってるんだ貴様!」


 わーお、なんて分かりやすい。やっばりって感じ。私実はこいつで色々と検証してたのだ。まあ検証とか言ってもなにか数値化して難しい事をやったりするだけの頭なんてないから主観でしかないけど……私はこいつの好感度を注意深く観察してたのだ。最初姿を見せた時は冷たい目で私を射抜いてた。それは確かに暗殺者の目だった。

 けど今は全然そうじゃない。いや、言動は必死にアンサンブルバルンの隠し腕としての矜持を持ってるように振る舞ってるけど、もうそれが出来てないし。バレバレだから! 最初の息もできない程の胆力は一体何処へ? と言わざる得ない。私がしたのは至って簡単。お話して、時折自然にその身体に触れたり触れさせたりだ。やっばり接触行為は何か心のたがを外すか緩める効果があるのかもしれない。

 

(でもだからって誰にされてもこんな風に成るわけないと思うけど)


 真面目に言って、多分私が可愛すぎるからだと思う。獣人たちは基本人種は同じに見えるようだけど、私は違うらしいからね。ちゃんと私と認識出来るようだ。それもこれもこの規格外の容姿があればこそ。このカメレオンはアンサンブルバルンの側近でかなりの信頼も得てる人物。ということはかなりの凄腕で強者の部類の筈だ。

 そんなカメレオンでも私の魅力には抗えない。それは大変な収穫だと言える。だってつまりはだよ……

 

「ふふっざーんねん。時間切れでーす。あーあ折角背中の洗い合いっこしても良かったのに、後悔した?」

「誰が貴様の様な子供に後悔など……」


 強がりを見せちゃって。まああの蛇の手前、乗ってくる事は無いんだけどね……それがわかってるから言える事。でもまあ身体を洗わせるくらいなら別にいいけど。なんかお姫様っぽいじゃん。けどこれで終わりじゃないよ。その期待と叶わぬ切望に私はするりとあま~い雫を垂らすのだ。

 

「そっか……見てるだけじゃ分からない事もあるよ?」


 そう言って私は徐にカメレオンの手を取って自身の胸の中心においた。まだまだ薄いけど一応はある。しかも今は一糸まとわぬ姿。こうやって毎回ちょっとずつ接触してるのだ。蛇は勝手に抱きついて来るから変化が分かりづらいけど、このカメレオンは触れてこようとはしないから、こっちから行く回数だけ数えとけばいいから楽だ。

 そしてどう変わってくのかも分かりやすい。最初はなんとも無かった。けど今は違う。

 

「や、やめろ!!」

「っつ!」


 慌てた様に手をどけたから私の胸の辺りに引っかき傷が出来た。獣人達って爪とかあるからね。普段は気をつけてるけど、慌てるとこんな事が起きる。特に人種の肌は弱いしね。

 

「すっすまん! アンサンブルバルン様になんと申し開きをすればよいか」

「むっ」


 ここであの蛇が真っ先に出てくるんだ。間違ってないそれ? 傷つけられたのは私なんだけど? 落とすか……完全に。私の白い肌に赤い液体が湧き出て来てる。もう少ししたらたれそう。

 

「ねえ……舐めれば治るかもよ。唾液は傷に効くって言うし」

「そんな馬鹿な……」

「あれれ? いいのかなー傷つけられたって言っちゃうよ?」


 カメレオンに逃げ場はない。私がさせない。さあ……舐めろ。上司の大切な物に傷をつけたという罪悪感。けどそれとは別にある私を見る瞳の奥の感情。舐めたいって言ってるよ。

 

「これは仕方ないこと……なのだ」

「そうだね……仕方ない。だから……おいで」


 両手を広げるとカメレオンはゆっくりと近づいて来て腰を下ろした。私は小さいからね。腰を下ろしてようやく私が少し見下げる程度。でもその位置はとても都合がいい。だって傷に向かって一直線だ。更に近づくカメレオン。肌に触れるか触れないかの所で一度身体が跳ねた。匂い……でも感じた? そんなカメレオンが逃げれない様に優しく頭を抱いた。そしてその舌を伸ばしてくる。

 吐息がとても強くなってる事に彼は気付いてるのだろうか? レロッと零れそうだった血をカメレオンが舐めた。その瞬間、カメレオンから力が抜けるのを感じた。けどそれは一瞬でそして身体は硬直する。

 

(落ちたな)


 私はそうおもいニヤリと笑う。耳元で「ありがとう」と囁きながら。

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