θ151
「は? 剣の試練?」
私は再び戻ってきたアスタナの拠点にてそんな事を言ってた。フィリーとミラは回収した。ついでに思わぬ収穫もあった。あれからすぐに今度はシシ達を迎えに行こうと思ったんだよ。当たり前だよね。だって彼女達は私の所要物なんだから。私が助けに行かないと。けどおかしい事に気づいた。シシ達のマナを感じる事ができなくなってたのだ。私が三人に送った紋章は私と彼女達の繋がりだ。私の力が流れてるって事は、それつまり、そういうことな訳で、シシ達は私の力を受け取れる代わりに私は彼女達の存在を確かめられる。
アレは保険な訳で、それは当然な事だ。けど、今私はシシの居場所がわからない。あの紋章があってそんな事起こりえる筈はない。だってなぜなら、私にはクリスタルウッドがあるからだ。私は世界をめぐるマナの流れを把握してる。つまりはマナでこの世界のどこにいても、クリスタルウッドと繋がってる私にはわかるはずなんだ。けど……分からない。それが起き得る候補の筆頭は既に死んでる……けどそれはそうやすやすと信じれることじゃない。
少なくても、この目で確認するまでは……なので最後にシシ達が入ったっていう部屋に来た訳だけど、そこには古びた剣がまるで伝説の剣かの様に台座に鎮座してるのみ。そしてこの剣の事を聞いた時に、アスタナの渋面が言ったのがその剣の試練なる言葉だ。
「何よそれ?」
「それは……」
むむ、何やら部外者には話しづらいことのようだね。けど既にあんた達は私の捕虜みたいなものだ。口を閉ざすなんてことは許さないよ。しかも今は私のシシとコランの命かかってるんだからね。私は少しだけ集中してアスタナの面々の周囲のマナだけ濃くしてやる。するとふらついて私に対して膝をつく。マナは何も吐いて吸ってるだけで取り込んでるわけじゃないんだよ。濃いマナを防ぐ術は生物にはない。ぞれこそ、そのマナに耐えれるだけの強靭な体がないと……ね。
「私の言葉、分からなかった? 言えって言ってるの」
私は渋面を見下しそう告げる。けど渋面は苦しみながらも懇願してくる。
「なら……せめて最低限の……数に……頼む」
既に泡吹いて倒れてるアスタナの奴もいる。残りの奴らもこうすれば話すかな? まあ加減を間違えると死にそうだけど……私的には別にアスタナが絶滅しようがどうでもいいからね。アスタナという種よりも私にとってはシシやコランの方が大切だし。私はとりあえずこの場に居るアスタナの周囲のマナの濃度を更に上げてやった。するとバタバタと次々と泡を吹いていくアスタナ達。こういう事、今までやってなかったけど、案外使えるね。魔法までにするのも私のマナの大きさじゃ労力多いし、こっちの方が簡単だ。
マナを出すだけでいいんだからね。まあ、一応操作はしてるけど。けどそれも、ちょっとマナ達に「そいつらの所に集まってて」と念じてる程度。クリスタルウッドと繋がってる私なら、その程度でマナが動いてくれるのだ。
「なぜ……」
「なぜ? 疑問なんてないじゃない。これ以上、私を不快にさせないでよ」
「く……わかった。話そう」
私は上の立場だからね。私から屈したりしないよ。屈するのは常に君たち。私は私のしたいようにする。邪魔はゆるさない。まあ渋面はここにいるアスタナの中で既に自分しか意識保ってないから折れたのかもしれないけど。とりあえず私は彼らの周囲のマナを拡散してあげる。聞き取りづらいの嫌だし。
「その剣は、我らが祖、そのものなのだ。我らアスタナの始まりは一本の剣、それも神剣だと言われてる。我らの目標はいつかその頂きに到達する事。伝えられる我らが祖は、使い手と共に、大地を割り、空を裂いたといわれている。神剣へと至る試練を祖は残してくださった。それが――」
「この剣って訳ね」
なるほどだけど、なんでそんなものがシシ達に反応して作動したのか謎だ。だってシシ達はアスタナじゃない。誤作動?
「ちなみにその試練に挑んだ奴っているの?」
「昔はそれこそ、沢山いたらしい……それはぞうだろう。神剣へと至る道がすぐ傍にあるのだから」
「確かに……」
「だが、その試練を潜り抜けた者はだれ一人いない。血気盛んな若者たちがこぞっては挑んで命を散らすから、今ではこの場所は禁忌なのだ」
それで聞かせたくなかったのか。
「待てよ……」
そこで何やら渋面が何やら考えこんでブツブツ言いだした。「二人での転送……まさか長たちが最高の使い手を求めたのは……」とかいってる。とりあえずつまりはシシ達はこの剣の試練の中に取り込まれてるという事だろう。だからこそ、私でも感じれない。それはこの世界とは違う場所に居るからだ。繋がりが消えた訳じゃないみたいだけど……こうなったら私もその空間に行くしかなさそうだね。私はひねくれてそうな剣を見つめるよ。




