θ147
そこは巨大な岩が見渡す程に転がってる場所だった。足元は泥。折角の服は泥だらけだ。けど、それでも生きてるってだけでおつりがくるだろう。だって私達は……
「あそこから落ちてきたんだよな」
「ん……ん」
背中のフィリーは何も言わない。まあよかっだろう。フィリーが今の自分の状態を見たら切れてたかもしれないんだから。ひとえにあそこから飛んで助かったのはフィリーのおかげだ。天使の羽という魔法で私達は少しの間浮けた。そのおかげで死なずに済んだ。けどその後、フィリーは倒れた。何故かはわからない。それだけ凄い魔法だったのか……それとも使い過ぎか? フィリーは常に絶対防御を張ってたからな。要所要所で使う事しかしなかった私達とは負担が違ったのかもしれない。
そういう事、フィリーの奴は言わないからな。特にシシやコランの前ではなおさらだ。色々と不満に思うこともないこともないが、こいつは悪い奴ではない。それがわかってる。だから見捨てるなんてことは絶対にしない。二人してちゃんと帰るんだ。
「今は……とても空が遠いな」
こうやって見上げると、本当にあの場所に居たのか……うたがわしくなってくる。そしてこうやって一人でいるとじんわりと涙が目元にたまる。もう二度とあの日々には戻れなんじゃないのか……そんな考えが頭をよぎる。だって……わたしは……わたしは皆のように強くなんてないから。ここがどこかもわからないどこに向かえばいいかもわからない。それでも何処かに進まないと……そうしないとここで野垂れ死ぬだけ。私だけならもう諦めてたかもしれない。けど、わたしの背中にはフィリーがいる。
普段のフィリーからは感じる事の出来ない、棘のない暖かさそれが今の支えだ。泥に取られる足をなんとか動かしてでっかい岩の傍までいた。それに手をついて荒くなった息を整える。
「み……水を」
そう思って魔法で水をだす。ありがとうラーゼ様。とても助かります。どこでも水が出せるって素晴らしい。
「よっ」
そう言って背中のフィリーの態勢を整える。そして動き出そうとしたとき、何やら岩がが動いた気がした。わずかだけどね。
――マナ――
――マナの流れを感じる――
――だれがこの場でマナの流れを変える――
そんな声がこの岩だらけの沼地に響く。
「な……なに? 一体……」
私は重なるように聞こえるその声におびえて後ずさる。何か他の種だろうか? 好戦的な種だったらどうしよう……そんなかんがえが頭に浮かぶ。その時はなんとかしてでもフィリーだけでも……わたしはプリムローズのリーダーなんだから!
そう思って強い瞳で顔を上げた時だ。
――そこか――
そしてわずかに背後の岩が蠢く。そう……それはいわではない。岩の様な種だったんだ。




