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「貴方達は……何者なのですか?」
フィリー姉さまが真面目なトーンでそういう。語尾を伸ばしてないから、本気モードなんだろう。そんなフィリー姉さまの言葉に向こうのおじ様が応えてくれる。
「我らは『アスタナ』」
アスタナ? そんな種はきいたことない。いや、私はそんな詳しくないから知らないだけかもしれないけど。そもそも人種が把握してる種がこの世界に存在してる種に対して圧倒的に少ないみたいな? それこそ、自分たちの国の周りと、昔から語り継がれて来たような……そんな種しかしらない。だって攻勢に出てから、沢山他の種を発見してるくらいだもんね。種図鑑は日々更新されてるとか。この人たちも、人種が初めて出会う種なのかもしれない。
「何も分からぬだろうな。人種程度では。貴様たちには何もないのだから」
「なにもない……ですか?」
彼の言葉がわからないからフィリー姉さまが疑問を呈す。けどどうやらそれ以上は説明してくれないようだ。
「我らの事などいいのだよ。我らは我らだけではそんなに重要ではないのだから。そしてそれは君たちも同じだろう」
「同じ……ですか? 私達と、貴方達が?」
どういうことなのか……あの人が何を言いたいのか私達は分からない。てかこうやってフィリー姉さまが時間稼いでるのは私がこの扉をどうにかする時間を稼ぐためなんだよね。ここは最初に居た建物とは少し離れてて、周りを見る限り、私達とあの人たちを繋ぐ渡り廊下が唯一の接点のようだ。つまりはやっぱり私にかかってるという訳だ。実は話に聞き耳をたてながらも色々とやってはみた。いや、色々とって言ってもノブ回してみるとか、いろんな部分をべたべたと触ってみるとかだけどね。
だって私は直接マナをどうにかなんて出来ないもん。それに陣の見方なんてしらない。そもそも陣は種によって全然違うらしい。そんな事を魔法を使える人に聞いた事がある。だから多分私がもしも魔法を使える人だったとしてもこれは読めないんじゃなかろうか? これは多分あの人たち……アスタナに反応するんじゃないのかな? マナはそれぞれ……その種族ごとに違うらしい。だから私達ではこの扉を開ける事ができない。けど出来ないから諦める事も出来ない状況だ。
一体どうすれば……
「ああ同じだ。お前たちも我々も、自分達だけでは何の価値もない存在。そうではないか?」
「それは……」
フィリー姉さまは言葉につまる。彼のいう事がわかるからなのだろう。彼はきっと私達はラーゼ様があってこそ……といいたいのだろう。それは確かにその通りだ。私達の価値はラーゼ様かいるからこそ。そうじゃなかったら、私達なんて……けどそんな私達と彼等アスタナが同じとはどういうこと? だって私達人種は最弱。けど、彼らは違うはずだ。それなのに同じって案外凄い卑屈ね。人種と同じという種がいるなんてびっくりだ。
「貴方達は、誰がいたら価値が出るのかしら?」
そこだよね。フィリー姉さまは直ぐにそれを訪ねる。けど……
「それを知る必要はない。そもそも、それはその時がくればわかる事。そしてその時は人種が終わる時だ。そして我らの悲願が叶う時。話はここまでにしよう。なにをしようと、君たちではその扉はあけられない」
そう言って彼が手を挙げると、後ろの奴らが臨戦態勢になる。こっちの話に付き合ってたのは余裕の表れ。フィリー姉さまは急いで絶対防御に意識を集中した。言葉の通りなら、この防御は絶対の筈。信じてますよラーゼ様!




