θ132
「これって船じゃないのかな?」
「なに言ってるのよコラン。空を飛んでるのよ。船じゃない訳ないじゃない」
「けど……外には何も見えないですよ?」
確かにそれはちょっと気になった。コランのいう事を頭ごなしに否定したくはないわけだから、ちょっとは考えるけどさ。やっぱり船以外で空を飛べる物なんて心当たりなんかないんだよ。こうやって窓から見ると船なら、プロペラとか何やらは見えるものだけど、この場所から見える者は大空しかない。建物自体が浮いてるとか? よくわからない。
「とりあえずそれは重要じゃないわよ。問題はここからどうやって逃げるかでしょ?」
「うーん、ぞうだね。ごめんなさい」
そうやってコランは素直に謝った。それからは私を先頭にフィリー姉さまとコランを間に挟んで最後尾にミラを置いて進んだ。私の魔法は色々と機転が利きそうだしね。本当は一番危なそうな役目なんてミラに押し付けたい。けど、適材適所という言葉がある。生き残り為には、無理をしないといけないんだ。それに万が一見つかっても、絶対防御がある。
私達は、通路をゆっくりと歩いてる。気配消しでも音とか立てたらバレるかもしれないから、慎重にいってる。しばらく進むと分かれ道があった。内部の方に続く道に、私達が歩いてきた、外周に続く道っぽい。外に出たいのなら、外周の方に行った方がいいのかもしれない。
「ど、どうする?」
内部にはきっと私達をさらった奴らがいっぱいいるだろうから心情的には外周なんだけど……外に出たって逃げられないからね。
「…………」
皆どうするべきか、悩んでる。だってどっちが最善の選択しかなんかわからない。
「声が聞こえるよ」
どっちも選べずにいると、コランがそんな事を言った。耳を澄ましてみると確かに話声が聞こえる。しかもこっちに近づいてきてる? 私達は通路の外周の方へ一体逃げて、積んであった箱の傍で小さくなる。はっきり言って、少しこちらに顔を向けるだけで、姿が見えるレベルだ。がばがばだけど、少しでも身を隠せる場所はここしかない。後は気配消しを信じるしかない。そしていざとなれば、幻影だ。自分達の逃げる側とは反対に幻影を作り出せば、少しは時間が稼げるはず。
どんどんと近づいてくる声と足音。足音はどうやらひとりじゃない。まあ話してるんだから、最悪二人はいるのが当然か。一人でべらべら喋ってたら確実にヤバいやつだ。そんな事を考えてると、ギュッとコランが繋いでる手に力を込める。大丈夫そうにみえて、やっぱり怖がってるんだね。大丈夫、コランは私達が守る。
(お願い、気づかないで!)
そんな祈りを無視するかのように、姿を現したそいつは何気にこっちを見た。




