θ113
それから色々と質問攻めにされた。ゼルの事とか、ゼルの事とかゼルの事とか。ゼルはこの世界では伝説みたいな存在だからね。伝説だけど、伝承でしかない存在とは違う。時々その姿を目撃した人たちとかがその姿を語り継いできてたみたいな? そんな存在と実際に相対したとなったら……この人達にとっては光栄な感じみたい。確かにこの体の持ち主もゼルには敬意払ってた。こいつらゼルの事ばかりで私の事は話題にあげることもない。
なんかムカつく……
「そ、そういえば、ゼルラグドール様から力を与えられるなんてラーゼもなかなか――」
「ははっゼルラグドール様もお戯れが過ぎますな」
「本当に。そもそも人種などではあのお方の力などまともに扱えることも出来ましょうぞ」
「その証拠に派手なことなど、世界樹の再臨くらいだ」
「まあ……それがとんでもないのですけどね」
くっ、最後の人だけはいい。許してあげよう。後は殺していい? でも自分で話振っておいて、ぼろくそに言われると恥ずかしい。ちょっとだけ私にも関心を示してほしかったんだよ。だって私はちやほやされたいからね。ゼルから力を授かった人という事でもっと尊敬されるかと思ったけど、そんな事はどうやらないみたい。こいつらにとっては私という存在はたまたまの偶然でしかないみたい。ゼルの戯れ……そうとしか思われてない。
だから私という存在はこの人たちの関心の対象にはなりえない。
(その認識が間違いだって教えてあげる)
関心がないのなら、関心を持たせる。私を無視するなんて許されないからね。
「それでゼルラグドール様の力をその人種から取れるんですよね?」
「勿論。ゼルラグドール様はそう約束してくれたわ」
「「おお」」
希望を見つけたみたいな皆さん。彼らは『シャグリラン』という種族でそこまで強くはないみたい。ただ、魔法にとても精通してて、独自の魔法体系を作り上げてるとか。マナとの親和がとても高いみたい。魔光石が体に埋まってるからなのかな? あんまり直接的な事は持ちろんきいてない。さりげなく会話の流れでそこら辺はわかったのだ。種族名は案外あっさりいうし、肉体派なのか魔法派なのかも話を聞いてるとわかる。
それに一応私にも魔法の感覚はわかるからね。人種の魔法の勉強はやってないけど、こいつらが使ってる魔法の流れは人種の使ってる魔法の流れとは違う。もしかしたら私がクリスタルウッドと繋がってるからわかることなのかもしれない。
「これで我らシャグリランも戦に参戦……いや、覇権さえ狙える」
「ああ、なんたってゼルラグドール様の力が得られたのなら我らこそが……」
なんか野望を抱いてるね。けど確かにゼルの力があれば……と思うのは仕方ない。私だってもっとゼルの力がバンバン使えれば世界取るのもいいと思うかもしれない。多分この体ならいけるんだろうね。希望を抱いてるようでなにより……けどここで私は爆弾を投下してあげる。
「確かにゼルラグドール様は約束してくれました。けどその対象はただ一人。それ以外のシャグリランは器として全てが大樹へと帰る――と」
ざわっと彼らがなる。それはそうだ。だってたった一人以外は全員が死ぬ……そう言ったんだからね。ははは、苦しめ苦しめ。私は顔を伏せたふりをしてほくそ笑む。ただで飴あげる訳ないでしょ。ゼルの力は破格だ。だからこそ、私の出した条件も一概に嘘とは思えない。だからこそ、こいつらは苦しむ。私をおろそかにするから……だよ。




