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θ77

 私達にこんな力があったなんて知らなかった。これが私たちの力? それともアイドルという存在の力? けど今はそれはどうでもいいことなのかもしれない。注目されてる。そして向けられる羨望の視線が私達セーバレスにはたまらない。体の奥底から何かが湧いてくる。そしてそれはとどまることをしらない。私たちにもスポットライトは当たってる。けど、この光はそれだけじゃない。私達サンライズのメンバー一人一人が文字通りに光ってる。


 そんな強い光じゃない。けど、自分たちの周りを紫の光が漂ってる。こんな事、初めてだ。確かに私たちは人種ではない。けど、普段の生活の中でその違いを感じる事はなくて……今までセーバレスとは何か……じっさい自分たちがよくわかってなかった。けど、今はわかる。てか、今私たちは最高に調子がいい。こんな調子がいい時があっただろうか? って感じだ。疲れてる筈なのに……そんなの全然感じない。しかも私達……どんどん、綺麗になってく気がする。


 髪の毛が毛先まで艶々になってるし、メイクで隠してたニキビも消えてる。体の隅々まで磨かれてるみたい。お風呂に入ったってこんなことになりはしない。けど確実に私達サンライズは輝いてる。羨望と言うお風呂が私たちをかつてない程に磨いてる。


(ごめんなさいラーゼ様……私たち、プリムローズを食べちゃうかもです)


 大胆不敵な事を私は思う。けどそれはなんの根拠もない自信なんかじゃない。憧れだったプリムローズ。そんなアイドルから対等以上に皆の視線を、心を奪ってる。そしてそれは次第に多くなってる。なんでわかるのかは私自身わからない。けど、羨望が大きくなってるのは感じるんだ。多分セーバレスの力なんだと思う。私たちは視線をかわす。その交わした視線には自信が満ちてた。皆、私と同じ気持ちなんだろう。


 私たちは走り抜けた。最高の動きが出来たのか……それは自分たちではわからないけど、聴衆達は答えてくれた。私たちは二曲を続けざまに歌って踊ったのに息一つ切れてなかった。それに対してプリムローズの面々は息も絶え絶えだ。凄い優越感がそこにはあった。


(ラーゼ様……私たちはやりました)


 一人だけ違う視線を向けてくるあの人に私はそう内心で言った。


「情けないですねプリムローズの皆さん!」


 そういうのは私たちのリーダーであるムウラ様。この人いまや、ノリノリである。すぐに調子に乗る人だからね。拡張された声はここにいる全ての人々に届いてる事だろう。そしてそんなムウラ様の言葉にシシ様がこういった。


「貴方達は……なんなの?」


 それは実際ラーゼ様がそれっぽい言葉を言ってくれるハズだったけど、ソレよりも先にシシ様が言っちゃったみたい。予定と違うけど、別にこの方が不自然ではないと思うし、予定通り名乗りを……とおもったら我らがムウラ様はなんか目が泳いでた。この人……予想外の対処できない人だった。私は後ろからこっそりと耳打ちしてあげることにした。


「そのまま、予定通りに進めてください」


 今はこの人の世話は私の役目ですね。侍女の人はこのステージにまではついてこれないし、ここでは私がフォローしないといけないみたい。そしてそんな私の言葉でムウラ様は持ちなおしてビシッと指をさして言葉を紡いだ。


「私たちは『サンライズ』!! 貴方達プリムローズを超えるアイドルですわ!!」


 その宣言の瞬間にドドーンと空に花火が上がった。派手な演出だ。それに伴って観衆達が沸きたった。そしてそんな興奮冷めやらぬという状況中、更にムウラ様はいうよ。


「今日はこの辺にしときすわ。ですがまたお会いしましょう。再び同じステージで。皆さんありがとーーーー!!」


 そうして宣戦布告ともとれる言葉を放って、私たちが乗った船は会場から遠ざかってく。そして十分に離れた所で私たちは皆、へたりこんだ。体の震えはいつまでたっても収まる様子がありませんでした。


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