#33
「本当にラーゼ?」
「そ、そうだよ! この美貌がこの世界に二つあると思うわけ!?」
いつでも噛める態勢のベルグの口の中で私はそう反論するよ。まさかこの美貌を忘れた? そんな事ありえる? だって私だよ。一度目にすると脳裏にまで焼き付くこの美貌だよ!? しかも二年でそれは更に磨かれてる。まあ私は寝てただけだけど。すると私の言葉を聞いてスズリは大きなため息を吐いた。
「はあー、そんなバカな事を言うのはアンタくらいね」
「失礼な。事実でしょうが」
するとようやくベルグの奴が私から離れる。てかこいつ狼なわけだし、匂いとかでわかるでしょ? なんで攻撃してきた? せっかくの高級な服が汚れちゃったじゃん。所々穴も空いたし、その毛皮で弁償させるぞ。ベルグの毛皮は高く売れそうだ。
「生きてたんだ。助けようとはしたんだけど、どうにも出来なくてね。あの時は助かった。ありがとう」
「うん、まあそれは良いからお面取ろうよ」
なんかお面のせいで感慨深くならない。だって顔見えないし……二年越しのお礼も実際そこまでいらないって言うかね。確かに私はスズリ達を助けたけど、あれはバルフゥルンデがプレッシャーかけて来たからだからね。まっ感謝してくれるのは良い気がしていいけどね。ようやくお面をとったスズリは二年でちょっと大人びてた。
胸も更に成長してる様に見える。
「なんだか綺麗になったね」
やっぱりこの年頃の女性には可愛いより綺麗の方が良いかなと? でもスズリは自身の成長にピンとしてない。
「そうかな? 胸が重くなったくらいで変わってないわよ」
そういうスズリはその豊満な胸を持ち上げる。ぶるんぶるんしてるよ。こうやって目の前でみると、迫力が凄い。くっ、やっぱり胸も巨乳の範囲にしとくべきだったか? それなら今の年齢でも、もっと大きかったはず。でもバランスは良いんだよね。この育ちかけの胸も悪くないし、やっばり私は完璧だ。誰かを羨む必要なんてなかった。
「で、そっちのもうろく狼はなんて事してくれんのよ」
「ふん、貴様だから襲っただけだ」
「うわ、なんてやらしい奴。一年中発情してんの?」
私襲われちゃったよ。この狼に! しかも私だからと、完璧に狙われてるし。ストーカー宣言だよ。
「ふざけるな! 誰が貴様みたいな化物に発情するか!?」
「ば……化物? リアル化物に言われたくないわよ!!」
やっばりこの狼は一度粛清したほうが良いんでない? まあ無理だけど。だって私は一撃必殺。素早いベルグに当たるわけない。けどそれはこいつは知らないからね。ハッタリはいくらでも出来る。
「やっぱりその毛皮剥いでやろう――んー」
ミスった。そういえば銃ないや。そもそも戦闘なんてやる気ないから求めてなかったよ。とりあえず指で銃の真似をする。これでも撃てるとは思う。
「貴様の強さは知ってる。が、我らもただ遊んでたわけではない。試してみるか? どれだけ成長したか?」
「えーと」
やっば、この戦闘狂めっちゃやる気だよ。こっちは一ミリもやる気ないんだけど……なんかベルグの身体から青い闘気見える。本気モードじゃん。ちょっスズリっ――て、
「ベルグはもう誰にも負けない」
こっちもじゃん! これだから野生は嫌い。文明がないもんね。強いものが生き、弱きは死す……それだけじゃん。誰か私を助けて〰とか思ってると、入り口から白い耳が出てくるのが見えた。あれは!
「すみませんが、決闘とかはご遠慮ください」
うさぎっ子! やっばり私の大好きなうさぎっ子だった。救世主だね! 愛してるよ!! そんな私とは対象的にベルグとスズリはうさぎっ子を警戒してる。