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θ66

「ラーゼ様~」


 甘い声を出してシシが私の腕に抱き着いてくる。身長はそう変わらないから、衝撃が結構来る。すこしふらつきつつシシの柔らかい感触を感じる。


「どうしたのシシ?」


 そう聞いてみたけど、なんとなく何しに来たのかはわかる。大方、私が男と楽しそうにしてるのかやだったんだろう。別に本心で楽しくしゃべってる訳じゃないんだけどね。まあ、話してみると案外悪い奴ではなさそうだけど。


「ラーゼ様がお一人では大変かなと思って、お邪魔でしたか?」

「あ、いや、そうだね。今日お会いしたばかりなのに、一方的に喋ってたかな? はは」


 ローデリア息子はシシの言わんとしてる事を察して自虐的に笑って見せた。シシも攻撃する意味合いで言ったんだと思う。でも相手は貴族だから、直接的にじゃなく、少し遠回りする感じにしてね。そして牽制の意味もあったのかな? 今までは私一人で相手してたから、ローデリア息子は何とかいい雰囲気に持っていこうとしてた。私はそれをとぼけたりして交わしてた訳だけど、そろそろネタもつきそうだったからね。


 私は別に特別、コミュニケーション能力が高い訳じゃない。私が突出してる部分は容姿以外ないのだ。後は規格外の力くらい? あとは平均以下です。なので交わすのもきつくなってきたからよかったよ。シシは私から興味を逸らそうとぐいぐいとローデリア息子に質問してる。その間に私はそっと立ち去りたい所なんだけど……シシが私の腕を放してくれない。まあきっとここから解放されたら他の貴族が来るんだろうけど。


 今はまだ主賓がいるから客の貴族達が遠慮してるだけだろうし。それならローデリア息子の前に居た方がまだましか。私は手近なボーイから飲み物を受け取る。透明度のあるちょっと金色っぽい飲み物。それを少し流し込む。なんかボーイの人が気まずそうにしてたけど、何か言われることはなかった。そして流しこむと喉がなんか熱い。ジュースにしてはのど越しもなんか違うし……これはまさか……私は周囲に視線を向ける。


(うん、お酒だね)


 すでになんか世界が少し回りだしてるように見える。足元も確かな感覚がないし……実は私、お酒に……というかアルコールに弱い体質の様なのだ。こういうところでは注意してたんだけど……今まで何も口にしてなかったから、ついつい急いで口に含んでしまった。


「ラーゼ様?」


 私が少しふらふらしてるのにシシが気づいたみたい。このままだとまずいかもしれない。別に性格がかわったりなんかはしないんだけど……私は自身の指を見る。するとうっすらと光ってる。やっぱりマナが漏れてる。


「ラーゼ――ふおおおおおお!?」


 ローデリア息子が変な声を出す。けどそれも無理はないかもしれもない。漏れ出るマナが私の魅力をさらに引き出しちゃうからね。どうやら酔った私はめっちゃエロいらしい。それこそ、思わず前屈みになるくらいに。そして異性はそれを制御なんてできない。ローデリア息子の声でこちらを見た貴族の男どもも同様に局部を抑えて前屈みなった。うん、変な光景だね。


「ふう」

「うっ!! すみませんが少し失礼します」


 私が甘い吐息を吐いただけでビクッとなる。これは……出たか? 変な格好でこの場を後にするローデリア息子。それに他の貴族達も続いてく。自分じゃそこまで変化してるのかはわからない。確かにぽやぽやするんだけどね。それだけだ。まあけど前にファイラルでこの状態になったら大変なことになったんだけどね。それ以来、お酒は控える様になった。公の場ではね。とりあえずこれで解放された。


 でも酔いを醒ましてないと、戻ってきたあの人たちはまた同じ状態になってしまうだろう。閑散としてしまった会場では、一部の女性たちが集まって何やらこっちを見てひそひそと話してる。まあ興味もないけど。


「ラーゼ様、お水です」

「ありがとミラ」


 お水を持ってきたミラに礼を言ってそれを流し込む。パーティーは一体中止の様相……これはいまのうちに帰ってもいいのでは? と思える。まあ実際そんな事したらローデリア家に泥を塗るみたいでできないけど……貴族とはなんとメンドイ。


「ラーゼ様、よろしいですか?」


 そういって一人の女性? いや男性? ちょっとどっちかわからない感じの人が声をかけてきた。その人は短髪で、けど顔は美しく、体は女性らしい。だからまあ女性だと思う。そもそも男はみんな出しに行ってる筈だしね。けどなんだろう? なんか違和感があるような? それに普通は貴族の女性は顔に模様を描いたりしない。流行ったりもしない限り。その二十代くらいの女性は右頬の所に何やら赤い模様がある。


 別に傷跡を隠すため……とかでもなさそうな? 貴族の女性はその顔を何よりも大事にしてる筈なのに……別段その模様が似合ってない訳じゃない。けど……普通はしないことだ。そういう家なのかもしれないけど。


「私、『オウセリア・ラジャード』と申します。いましかないと思い、お声をかけた次第です」


 そう言ってそのオウセリア・ラジャードさんは淑女の礼を何やらゆっくりとする。いや、これは私にそう見えてるだけ? 頭を下に向けてる彼女はそしてぼつりという。


「不束者の無礼をどうかお許しを」


 つまんだスカートをあげると何かが落ちる。そしてそれが壊れると同時に空間がゆがんだ。そして気づくと星を見上げることが出来る屋外に私はいた。オウセリア・ラジャード……その人と二人で。


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