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θ61

「みんなあーー! 今日は楽しんで行ってねえええええ!!」


 そんなシシの言葉に大地が揺れるかと思う程の声が応える。そしてぎりぎりの低空に止まってる船の甲板で私たちプリムローズは汗を煌めかせながら次の曲に移る。空は曇天……けど、それを吹き飛ばす暗いの熱気がここにはあった。



 ジュゴゴゴ――とストローで飲み物をすする。ライブも終わって受け取った飲み物は濃い葡萄ジュースだった。よく冷やしてくれてたから、無くなった水分を体が求める様に一気に飲み干した。


「あの……ごめんなさいラーゼ様」

「うん?」


 そう言ってきたのはコランだ。私は何の事? みたいなニュアンスを醸し出すよ。するともじもじとお腹の前で組んだ手をしながらこういう。


「えっと……私……今日いっぱいミスしちゃったから……」

「そうだね。何か気になることでもあったのかな?」


 私はコランの頭に手を置いて優しくなでながらそう聞くよ。確かに今日のコランはミスが多かった。まあこのメンバーで一番ミスするのはコランなんだけど……でもコランって本番に強い子だったんだよね。練習では一度も完璧にできなくても、本番になると、自分の力以上のパフォーマンスをするっていうね。まさにステージに愛されてるかの様な子なのだ。そんなコランが今回は練習でも出来てた様な所もミスしてた。


 普通じゃありえない。なんだか心ここにあらずって感じ? まあステージ前からわかってたんだけど、何とかなるかなーとか思ってたらそんなわけなかった。まあコランはプリムローズの中でも一番の末っ子的位置だ。多少のミスなんかはファンたちも笑って許してくれる。だから問題はなかった。これが続くとなれば流石に問題だけどね。


「その……わからなくなったんです」


 どうやらコランは何かに悩んでるみたいだ。でももしかしてこんな所は嫌だ――とかいわれたら私ショックで立ち直れないよ。


「愛って……なんなのかなって」

「んん?」


 なにやらコランは深いことに悩んでるらしい。もうそんな事を考える年ごろなのかな? 女の子は早熟っていうしね。コランくらいでもそんな事を考えるのかもしれない。まあでもそれを考えられるのも余裕があるからってことかもしれないけどね。生きるのに必死ならそんな事、思いもしないだろうし。でもそんな事を考えるコランが微笑ましいと思う感情と共に、一抹の不安もある。それはもしかしてコランには気になる人でもいるのかも知れないという事だ。


 ダメダメコランは私の何だから! まあプリムローズのメンバーは皆私のなんだけどね。だって私が趣味と独断と偏見で集めたんだもん。そこは間違いない。そんな子達が男どもに取られていくのはなかなかに悲しい。まあ仕方ないことでもあるんだけど……でもコランはもっと先だと思ってたんだけどな。


(いやいや)


 私は嫌な考えを振り払う様に頭を振るう。だってそうと決まった訳ではない。まずはコランに確認しないとね。


「コランは誰か気になる人でもいるのかな?」

「えっと……そうじゃないです。けど、いろいろ見て……なんだかいいなぁーとか思っちゃって」


 なるほど、恋してるミラとかを見て感化されちゃったわけだ。確かに恋する女の子は輝いて見えるしね。それにあこがれるのは普通なのかもしれない。ふうよかった。コランが誰かに恋してる訳じゃなくて。


「私は……ラーゼ様や皆が大好きです。周りにいてくれる皆皆……けど、それとは違うのかなって?」


 コランの純粋な瞳が私を射抜く。ごふう……可愛すぎだよこの子。純粋だねコランは。是非ともこのまま育ってほしい。私はとりあえずギュッとしてあげることにした。


「ふえええ、ラーゼ様?」

「大丈夫、皆もコランの事大好きだからね。確かに今コランが悩んでる事はちょっと違うかもしれない。でもそんなのは自然と分かるようになることだよ」

「そうなんですか?」

「うん、コランが素敵な女性になれば嫌でもね」


 私は優しくそういってあげる。まあコランが素敵な女性になるのは確定事項みたいなものだけどね。だって既に可愛いし。可愛いと素敵は違うかもしれないけど、コランは気配りもできるし、大丈夫な筈。私たちか教育を間違えなければね。


「私もラーゼ様みたいに素敵になれます?」

「当然だよ!」


 私はテンション高く抱き着く力を強める。だって可愛いんだもん。何やらシシが嫉妬の目線を向けてたけど、あとでちゃんとギュッとしてあげるよ。皆私の可愛い子達だからね。新たな領で迎える次のステージはきっともっと良くなるはず。私はそれを確信したよ。


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