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32/2414

#32

 白狼の森についた。けどなんだか前と違う? 深い霧が出てて、森自体が見えない。しかもこの霧、森から外には一切出てないよ。どういうこと? 森の手前にいるわけだけど……私達の居る所はハッキリしてる。けど、きっとこの森に入ると数メートル先も見えないだろう。こんなんだったっけ? 

 

「どうしましたラーゼ様?」

「いや、この森ってこんなん?」

「そうですね。白狼の森は大体いつもこんな感じですよ。余所者を寄せ付けないかの如く靄を張ってます。無闇に足を踏み入れるものなら、どこからともなく白狼が現れて、死んだことにも気づかない……それが白狼の森の常識です」


 うさぎっ子がそう言うんだからそうなんだろう。私が見た森は特別だった?

 

(あっ)


 もしかして雨のせいでこの霧がはれてたのかもしれない。かなり降り続いてたしね。霧の原理は知らないが、その可能性が高そう。私は後ろをみる。護衛の獣僧兵団は怯えてる。しかもかなりボロボロ。なんだか魔物が多かったらしい。だからこれ以上は行きたくないんだろう。それがありありと見て取れる。まあそもそもついてきて貰っても困るんだけどね。

 だって白狼達にとってこいつら敵だし。一緒に居ると私まで襲われるかもしれない。てな訳で、護衛はここまでで十分。私は一人で森へと進む。するとシーシとうさぎっ子もついてきた。

 

「一緒に来るの?」

「私も白狼姫を見てみたいんです」


 そう無邪気にいうシーシ。お転婆な歌姫だね。私が言うことじゃないけど。けど後ろの護衛の人達は困ってる。そりゃそうだよね。私だけならともかく、シーシまで森に入ったら守る人が居ないのに何やってんだ? てな事になる。それでもしもシーシになにかあったからこいつら全員打ち首ものだ。私が死ぬのは望んでるだろうけど、シーシはそうじゃないはずだ。

 

「シーシ様、貴方様まで来られると彼等の大義名分がなくなりますわ」

「貴女が居るじゃない?」

「私はそのような身分ではございません」

「そっか」


 うさぎっ子の言葉になんとか納得してくれた? シーシは残念そうに歩みを止める。けど私達が森に入る直前に声を張って言ってきた。

 

「では、白狼姫をここまで連れて来てくださいねラーゼ様!」

「うーん、出来たらね」


 そんな曖昧な返事だけして、私はうさぎっ子と共に、森に足を踏み入れる。その瞬間だ。なんかザワザワした。私もそうだけど、この森全体からそんな感じを受けた。

 

「ねえうさぎっ子……うさぎっ子?」


 あれ? 数歩後ろに居たよね? 既にいないんですけど……なにこの森、こわ!? そう思ってると、前方の一部だけで霧がはれていく。凄い、まるで生きてるかのよう。……これはベルグかスズリの仕業? それとも……そう思いつつも、案内してくれるのなら、森をさまよう事も無いから私はその道を進む。しばらくすると懐かしき洞穴が見えた。見たところ二年前と変わった様にはみえない。

 私はとりあえず蔦の簾をくぐり抜ける。するといきなり臭い息とともに、鋭利な牙が見えた。そのままバクっとされちゃう。そして洞穴の奥に投げ飛ばされた。盛大に転がって壁にぶつかる。

 忘れてたよ。こいつらが獣だって事! 

 

「やってくれるじゃないクソ狼!」


 突進してくるベルグ。けどその時甲高い声が響いた。

 

「ベルグ!!」


 寸前で止まるベルグ。その口は再び私を噛もうとして寸前で止まってる。いやいやだから臭いから。視線を横に逸らすと、お面で巨乳の女が居た。

 

「うん、その胸はスズリだね」


 私がお気に入りの胸を間違える筈はないのだ。

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